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渋野日向子の心が許せなかったもの。
曲がっても、空振りしてもいいのだ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGolffile/AFLO
posted2020/08/24 19:00
渋野日向子の全英女子オープンは2日で幕を閉じた。しかし、それとて長いキャリアの1戦でしかないのだ。
敗因は本当に「風」だろうか。
しかし、彼女の最大の敗因は、本場リンクスの風ではなかったと私は思う。
「風どうこうより、自分の問題です」
そう、彼女の惨敗の根本原因は、悔しさを噛み締めながら渋野自身が発したこの言葉に尽きるのではないだろうか。
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初日。渋野はスタートホールのパーパットを決められず、ボギー発進となった。2番でもボギーを喫し、そして迎えた4番のパー5でポットバンカーからの脱出に2度失敗し、トリプルボギーの8を叩いた。続く5番もボギー。出だしの5ホールで6打を落とした。
しかし、難関のパー3の8番で見事にバーディーを奪うと、後半はパーパットをスルスルとカップに沈め始め、2バーディー、2ボギーのパープレーを披露した。
後半のみとはいえ、あの強風の中でのパープレーは、お世辞抜きにディフェンディング・チャンピオンらしいプレーぶりだった。よく耐え、よく持ち直したと思う。
バンカー脱出を失敗した4番のプレーを含めて、渋野自身は「初心者に戻ったみたいだった」と振り返っていたが、初心者ならば、その後に持ち直すことはできなかっただろうし、ましてや難コンディションのロイヤル・トゥルーンのバック9でパープレーを披露することなど、できようはずがない。
初日の渋野はチャンピオンらしかった。
そう、初日の渋野は確かに大きく出遅れたが、まだまだチャンピオンらしさを感じさせるゴルフが少なくとも後半はできていた。
言い換えれば、何が起こるかわからないリンクスコースで開催される全英女子オープンにおいては、バンカー脱出に2度失敗した程度では、死なないし、終わらない。
そのことを渋野自身がどこまでどんなふうに認識できていたのか――。そこが運命の分れ目だったのだろうと、今は思う。