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渋野日向子の心が許せなかったもの。
曲がっても、空振りしてもいいのだ。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byGolffile/AFLO

posted2020/08/24 19:00

渋野日向子の心が許せなかったもの。曲がっても、空振りしてもいいのだ。<Number Web> photograph by Golffile/AFLO

渋野日向子の全英女子オープンは2日で幕を閉じた。しかし、それとて長いキャリアの1戦でしかないのだ。

メンタルは、強いか弱いかではない。

「悔いを残してしまうゴルフをしてしまった。悔いの残る初めてのディフェンディングの試合だった」

 客観的に眺めれば、渋野が崩れた主原因は明らかにメンタルにある。とはいえ、単にメンタルが「強いか、弱いか」ではない。

 大自然の猛威や脅威に翻弄されるスコットランドのリンクスでは、たとえ日本では大失敗とみなされることでも「全然OK」の許容範囲。ダブルボギーもトリプルボギーも、バンカー2連続失敗も傾斜地からの空振りも「想定内だし、許容範囲。その程度では死なないし、終わらない」。

 そういう異空間ならではの等式を、彼女は見抜くことができず、頷くことができなかった。

 リンクスでの全英挑戦は初めてゆえに、わからなかったのだろうから、敗因に経験不足が含まれることは言うまでもない。しかし、内陸コースだったとはいえ、昨年大会を彼女は初挑戦で制覇したのだから、「経験不足」は究極の敗因にはなりえない。

発端は、許せなかったこと。

 渋野自身は「自分の問題」として、アイアンショットの精度や不安をしきりに口にしていた。

「(練習は)いろいろやってきました。でも、この2週間は1つも成果を出せなかった。アイアンショットはポンコツでした。それに加えて風もあって、思ってもいないところへ飛んでいく。気持ち的に苦しかったです」

 なるほど、選手は往々にして「技術先行」。技術があれば心も落ちつき、いいゴルフができると考える。一方で、サポートする周囲は「メンタル先行」を指摘する。心が乱れるからゴルフが乱れるのだ、と。

 どちらが先か。それはニワトリとタマゴのようなもので、どちらか1つが答えにはなりえない。

 しかし今回の渋野の惨敗は、まず心が切れた。だから技術を発揮することができなくなった。「ポンコツだった」のは、アイアンショットではない。心が切れたのは、メンタルが弱いのではなく、許容しても構わないはずのものを彼女の心が許せなかったことが発端だった。

 初日の渋野は8番パー3で持ち直し、2日目の渋野は8番パー3で心を切らし、崩れていった。リンクスゴルフにおいて、それは致命的なミスだった。

 しかし、ちょっと考え方を変えれば、「それだけのこと」。

 しぶ子よ、そのぐらいの割り切りで、この悔しさを吹き飛ばせ。世界を渡り歩くつもりなら、もっともっと図々しくなっていい。

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