プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・亀井善行の凄い“触媒能力”。
1番か5番に入らねば、打線が不調に。
posted2020/08/11 18:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
新型コロナウイルスがこれほどの大騒動になる以前の2月のキャンプで、巨人・原辰徳監督とのこんな話が頭に残っている。
昨年限りで引退した阿部慎之助二軍監督が担っていた代打の切り札は誰になるのか?
やっぱり年齢的にもチーム最年長の亀井善行外野手あたりが……と名前を挙げると、原監督は即座に首を振って、その考えを否定したのである。
「亀ちゃんはね……僕の中ではそういう代打の切り札的に表に出して戦うよりは、困ったときには亀ちゃんがいるという、そういう存在なんですよ」
亀井はチームがうまく機能してくための触媒。
監督の説明では亀井は打つ方では1番でも5番でも、守備でも右翼に左翼に一塁も守れる。チームのどこかにほつれが生じたときに、亀井がいることで途切れた線がつながるような存在なのだ、と。
だから代打の切り札とか、そういう1つの役割を与えるのではなく、無任所でチームがうまく機能してくための触媒となって欲しい。
それが原監督が考える亀井の役割だ、ということだった。
「彼のそういう存在感というのは、チームにとって滅茶苦茶、大きい! だからこそ、まずは亀ちゃんを抜きにこのチームを考えるということが大事だと思うんです。
そうなるか、そうできるかどうか、現実は分からない。でも、いまこの時点でのチーム作りの思想としては、亀ちゃんの存在を抜きに戦えるチームを作ることが大事だと思う」
2月の時点では亀井抜きでチームの骨格を作り上げることが、連覇を目指すチームのテーマの1つだった。
ところが現実は……亀井が入らないと打線が機能しない。原監督の当初の構想は根底から崩れっ放しで、その結果が、開幕から続く猫の目オーダーということになるのだ。