ツバメの観察日記BACK NUMBER
ヤクルト版“新しい観戦様式”。
僕はホテルの窓越しに開幕戦を見た。
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph bySports Graphic Number
posted2020/06/22 17:00
双眼鏡を通して試合を見守る長谷川氏。一塁側ヤクルトベンチが丸見えでファンにとっても嬉しい眺望だ。
生観戦とテレビ観戦のいいとこどり。
イニング間には、おなじみのスタジアムDJ、パトリック・ユウの軽快なMCもダイレクトに耳に飛び込んでくる。ダンスチームのパッションがスタンドでソーシャル・ディスタンスを保ちながらパフォーマンスを披露するのもハッキリと確認できる。
バックスクリーンの大型ビジョンには'20年版の選手登場映像やファンからの応援メッセージが映され、グラウンド整備の間にはつば九郎によるおなじみのパフォーマンス、空中くるりんぱも披露された。そのすべてを自分の目で確認できることが嬉しい。
細かいシーンは手元のタブレットのダゾーン中継で確認する。およそ2球分程度の遅れで試合が進んでいる。窓越しに生のプレーを見た後に手元に視線を落とすと、ちょうど先ほどのプレーが再現されている。このリズムに慣れてしまうと、生観戦とテレビ観戦のいいとこどりをしている気分になる。
苦節40年、願い続けた夢が叶った。
生観戦の醍醐味として、「自分の見たいところがいつでも見られる」ということがある。僕はブルペンを見るのが好きなのだが、この日の個人的なクライマックスは20時過ぎに訪れた。
一塁側ブルペンでは背番号「90」をつけた長谷川宙輝が黙々と投げ続けている。ヤクルトファンになって40年。子どもの頃から「自分と同姓の選手がヤクルトにいればいいなぁ」と思い続けてきた。
苦節40年、子どもじみた願望がついにかなった。しかも、実力派の剛腕サウスポーだ。好きにならずにいられない。
そして20:15、昨年まではソフトバンクの育成選手で、移籍したヤクルトで今年から支配下登録された長谷川が登場する。場内に響き渡る「ピッチャー、長谷川。背番号「90」のアナウンス。40年間の夢が叶った瞬間だった。
結果的に2/3イニングを投げて1失点だったが、長谷川のプロ第一歩をこの目で見届けたことは誇りたい。