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高校野球のリーグ戦を試みる公立校。
萎縮しないプレー、個人タイトルも。

posted2020/06/22 11:30

 
高校野球のリーグ戦を試みる公立校。萎縮しないプレー、個人タイトルも。<Number Web> photograph by Kou Hiroo

香里丘高校が中心となって2019年に開催された『Liga Futura』。高校野球の新たな道筋となるか。

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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Kou Hiroo

 今年の高校野球は、新型コロナ禍によって前代未聞の中止が相次いだ。「代替大会」が甲子園や全国で行われることになったが、高校球児の気持ちは複雑だろう。

 しかしこうした大きな災難は、変革への転機になりうる。高校野球も1世紀が経ち、いろいろと問題がでてきたのは間違いがない。“コロナ明け”に新たな展開が始まってもいいのではないかと思う。

 高校野球において、現状で最大の問題点と筆者が感じるのは「トーナメント制」だ。

 もともとアメリカの東海岸で始まった野球はリーグ戦だった。参加したチームが総当たりで対戦して優劣を決めるものだった。

 日本にもたらされた当時も大学野球はリーグ戦だったが、大正期に始まった全国中等学校優勝野球大会というトーナメント戦の大会が、全国的な人気を博した。この大会のために甲子園球場が開設され、人気はさらに高まった。現代に連なる高校野球はこうして始まったのだ。

一戦必勝が生むドラマ性と弊害。

 トーナメント戦は「一戦必勝」だ。負けたら後がないから選手も観客も過熱する。これが数々の「甲子園のドラマ」を生んできたのだが、弊害も多い。

 負けられない試合が続くから、常にエースが投げることになる。球数が嵩み、肩やひじの負担も大きくなる。甲子園で活躍した投手がプロで伸びないケースが多いのは、トーナメント戦で消耗するからだ――とも言われている。

 これは野手陣にも当てはまる。一戦必勝のため、常にベストメンバーになるのだ。レギュラーの経験値は上がるが、控え選手はベンチを温め続けることになる。

 エースやレギュラーの負担が大きくなる一方で、控え選手の経験値はなかなか上がらない。これがトーナメントの弊害だ。

【次ページ】 年間の公式戦、約40試合と3試合。

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