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高校野球のリーグ戦を試みる公立校。
萎縮しないプレー、個人タイトルも。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKou Hiroo

posted2020/06/22 11:30

高校野球のリーグ戦を試みる公立校。萎縮しないプレー、個人タイトルも。<Number Web> photograph by Kou Hiroo

香里丘高校が中心となって2019年に開催された『Liga Futura』。高校野球の新たな道筋となるか。

年間の公式戦、約40試合と3試合。

 またトーナメント制は、勝てば試合数が増えるが、負ければそれで終わりだ。

 日本の高校野球の公式戦は、都道府県レベルでは春季大会、選手権の地方大会、秋季大会があるが、すべてトーナメント。勝ち進めば春夏の甲子園や神宮大会などの全国大会を含め公式戦は40試合ほどになるが、初戦で負け続ければ年に3試合だけだ。

 そしてトーナメント制は一戦必勝だから、指導者はどうしても「勝利至上主義」になってしまう。度を越した厳しい指導や、スポーツマンシップにてらして疑問が残る戦術、戦法に走る指導者もいる。

 いろんな意味で、トーナメント制は、日本野球をゆがめてしまっているという見方があるのだ。一部の指導者から「高校野球にもリーグ戦を」という声が上がっている。

 そして各地で、実際にリーグ戦が始まっている。

大阪の有力公立、香里丘高の取り組み。

 大阪府立香里丘高校は、数年前から近隣のチームとリーグ戦を行っている。この学校は2018年には北大阪大会で準々決勝まで進むなど、公立では有力校だ。

 もちろん非公式戦だが、藤本祐貴部長は手ごたえを感じているという。その藤本部長に話を聞いた。

「僕は今の甲子園中心の野球に疑問を感じていました。甲子園で活躍した選手、特に投手がプロなどその先で活躍できていないこと、金属バットの反発係数が上がりすぎて打高投低が顕著になりすぎていることも問題だと思っていました。今の金属バットでは、アウトサイドインなど間違ったスイングでもバットの性能が良すぎるので打ててしまいます。そのために上のレベルで伸び悩んで野球を断念する選手もいます。

 トーナメント制に加えてこうした問題が、野球人口の減少につながっているのではないかと考え、同じ考えを持った6校の指導者で構想をまとめ、いろいろ改革を盛り込んだリーグ戦を始めることにしたのです」

【次ページ】 日程、グラウンド確保は難しかったが。

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