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本田圭佑を直撃取材。「中学から
人生の逆算の方程式はできていた」
posted2020/06/21 09:00
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
<後編「本田圭佑が語る。カッコつける理由、『嫌なこともやる』、『自助論』。」は記事最終ページ下の「関連記事」からご覧になれます。>
助手席のドアを開けると、運転席で本田圭佑がハンドルを握っていた。白い短パンに、白い麻のシャツ。足元は革のサンダルだ。いつものように両腕に時計を巻き、サングラスをかけている。
6月中旬、モスクワ郊外のCSKAの練習場──。
本田が運転する真新しい四駆に乗り込むと、やわらかい香水の匂いに包み込まれた。
本来ならば練習場で取材する場合、クラブハウスの出口で待って、車のドア越しに質問するのがパターンだ。
だが、この日本代表のエースにとっては「いつもどおり」では刺激も、おもしろみもないのだろう。車の横から今回のテーマである「思考法」について聞きたいと交渉すると、驚くような提案をしてきた。
「ちょっと時間がないんで、家に帰りながら車で答えてもいいですか?」
断る理由などあるはずがない。慌てて待たせていたタクシーに残金を払い、助手席の側にまわった。
想定外が起こることも、自分にとっては想定内。
「参考までに、家までどれくらい?」
「30分くらい。まあ、道が混んでいたら、もっとかかりますけど」
この日ばかりはモスクワ名物の渋滞が頼もしい。本田がシフトレバーをドライブに入れるのとほぼ同時に、録音機のスイッチを押した。
――去年取材したとき、2010年W杯のカメルーン戦のゴールもデンマーク戦のゴールも想定内だったと言っていた。本田くんにとって「想定内」とはどんな概念?
「すごいシンプルで、僕は常に『想定外も起こりうるだろう』って考えている。たとえば試合前に100の準備をしたとする。でもプラスアルファで20何かが起こるだろうって心構えをしておくわけ。当然、それが何かはわからないけど、とにかく何かが起こるだろうと。だから、想定外が起こることも、自分にとっては想定内なんです」