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本田圭佑を直撃取材。「中学から
人生の逆算の方程式はできていた」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/21 09:00
直撃取材はCSKAモスクワに所属していた2011年に行われた。同クラブには4シーズン在籍し、うち2季でCLに出場した。
「安定」という言葉は僕の辞書にはない。
――完璧な準備をする一方で、さらに何かが起こると考えておくと。
「そうすればもし想定外が起こったとしても、気持ちを切り替えやすい。試合で予想が外れるなんでざら。想定外の困難に負けずに、勝利に向かって走り出すっていう心構えを作ることが重要だと思う」
モスクワの道路はやはり混んでおり、すぐに渋滞につかまった。だが、本田は隙間を見つけるとぐいぐい車線変更していく。高速道路の入口では長い車列をすっ飛ばし、ぎりぎりまで近づいてからスッと列に入り込んだ。
これまでいろんな選手の車に乗ったが、最も運転が力強く、勢いがある。
――これまでの日本ではいい学校に入って、いい会社に就職するのがエリートとされてきた。でもビジネスの国際化が進み、そういう安定志向の人材は通用しなくなってきたと言われている。本田くんは「安定」という言葉についてはどう思う?
「安定って言葉は、これまで生きてきてあんまり使ったことがないし、聞いたこともないですね。僕の辞書にない言葉です」
人生は上がるか、落ちるかのどちらか。
――辞書にない?
「だって、人生は上がるか、落ちるかのどちらかでしょ。安定っていうのは横棒の状態のことを言ってるんでしょ? 誰かがそれを安定と呼んだだけで、僕からしたら横棒というのは下に落ちているわけで」
――確かに安定は、あとから見たら落ちているのかもしれない。
「そう。ただ、勘違いしちゃいけないのは、下に落ちるっていうことが、進化してないということではないんですよ。下に落ちるのも、次に昇るための変化かもしれない。昇るために、落ちることが必要なこともある」
――今は谷だから、次はこういう山にしようというイメージがあるということ?
「それがイメージできたらすごいけどね。大抵は自分が今から谷に向かっていますって受け入れられるものではない。トンネルをくぐっていて、それが山なのか谷なのか、いつ抜けられるかもわからない。でもなんとか、その真っ暗なトンネルを抜けたくて必死に進むわけですよ。大事なのは、その辛い時期を残念と思うのか、自分にしかできないチャンスだと思うのか、っていうところだと僕は思っている」