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本田圭佑を直撃取材。「中学から
人生の逆算の方程式はできていた」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/21 09:00
直撃取材はCSKAモスクワに所属していた2011年に行われた。同クラブには4シーズン在籍し、うち2季でCLに出場した。
どんな壁にぶち当たっても、絶対に越えてやる。
本田がかけていたサングラスを外して、シャツの胸元に挿した。言葉にいっそう熱がこもる。
「だから大事なのはね、現状を自分でどうとらえるか。これまでずっと自分を奮い立たせてやってきたし、いるんな面から困難に向かうことを経験してきた。どんな壁にぶち当たっても、絶対に越えてやろうと思っている」
2010年1月、本田はオランダのフェンロからCSKAに移籍した。あれから約1年半が経過したが、まだ次のステップヘの具体的な道筋は見えていない。
しかし、トンネルを突き進む経験こそが、新たな上昇曲線につながることを本田はこれまでの経験から知っているのだ。
実際、今、本田は急激に調子を上げ始めている。5月のロシアカップ決勝で決勝点をアシストしたのを皮切りに毎試合のように得点に絡み始め、CSKAが首位に立つ原動力になっている。2位アンジとの大一番ではゴールも決めた。
この車に乗り込んだ日は、ちょうどそのアンジ戦の翌々日だった。
敗戦後はどう気持ちを切り替えている?
――最近の好調の理由は?
「あえてあげれば、足首の痛みがなくなったことかな。アジアカップで痛めて、ヨーロッパリーグのFCポルト戦でもひねった。その痛みがなくなってきている。まあ、点が取れるか取れないかは紙一重だから、ゴールが決まらなくても悲観はしていなかったけどね」
――誰だって試合に負けたら落ち込むと思う。敗戦後はどう気持ちを切り替えている?
「勝っても負けても、必ず次の週に試合のDVDを見直すようにしている。ただ、試合当日はプレーについては触れないようにしている自分がいますね。で、翌日から話をするようにしている」
――それはなぜ?
「試合後って、まわりが僕以上に気を遣うでしょう。結果が良かったにしても、悪かったにしても。良かったら『おめでとう』ってオレ以上に喜ぶし、負けたらオレ以上に悔しがっているから。心配かけたらあかんなっていう自分がいるんでしょうね、本能的に」
─―でも翌日からは、自分から試合の話をすると。
「次の日になると、まわりがそこまでホットじゃないわけですよ。まあ、結局は人ごとですから(笑)。だから、オレは翌日から試合の話をする。『どうやった?』とか、意見を求めたりね」