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本田圭佑を直撃取材。「中学から
人生の逆算の方程式はできていた」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/21 09:00
直撃取材はCSKAモスクワに所属していた2011年に行われた。同クラブには4シーズン在籍し、うち2季でCLに出場した。
ずっこけ方を早いうちから学ぶべき。
――早い段階での挫折っていうのはエネルギーになる。
「そうだね。このたとえでふさわしいかわからないですけど、子供の頃悪いやつは大人になるといいやつになるってよく言うじゃないですか。それと一緒で、挫折をわかっている人間は、何が本当の成功なのか、どうやったら挫折を乗り越えられるのかをわかっている気がする。逆に順調に来たやつは、大人になってずっこける可能性がある」
――きっとその不安が安定志向につながるんだよね。
「ずっこけない成功なんてないんですよ。ずっこけ方を早いうちから学ばないと、あとで立ち直れなくなる」
──転んだ経験のある人の方が、のちに這い上がる可能性があると。
「最近、サッカー界でも多いでしょう? ユウト(長友佑都)もそうだし、オカ(岡崎慎司)もね。オレらの世代はそういうコンプレックスを抱えてる」
谷間世代だとは思っていない。
――谷間世代だと?
「谷間世代だとは思っていないですよ、僕は。その前にすごい世代がいなきゃ谷間にはならないでしょ。その前にいた誰がすごい世代なの? 日本人で誰がすごいのか教えてくれって思っているから」
――確かにそうだ(笑)。北京五輪もいい挫折になった?
「もちろん。あれはあれでやっぱり悔しかったし」
――心の傷には?
「傷にはなっていない。あれは負けたなんて自分では認めていないしね。オレはあのあといろいろ言われたけど、あんなの(オランダ戦でバベルを倒して与えたPK)は未だに審判のせいだって思っている。PKなんでなかった。負けてなんかなかった。試合に負けたのは事実だけど、負けていないっていう気持ちは大切にしようって思っているから」
――それは面白い発想だ。挫折を歓迎はしているけども、挫折を負けたと思っていないということ。
「結果的には挫折だけども、気持ちではくじけてない。気持ちは一切折れてない」
(Number783号[ガンバユース不合格→日本代表のエース]「本田圭佑『俺の辞書に“安定”の文字はない』」より)
後編「本田圭佑が語る。カッコつける理由、『嫌なこともやる』、『自助論』。」は下の「関連記事」からご覧になれます。