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「前輪駆動」から「四輪駆動」へ。
成長する王者コントレイルの原点。
posted2020/05/27 11:50
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Takuya Sugiyama
ダービーを勝つ馬には何が求められるのか。
その問いを、武豊騎手をはじめとするダービー優勝経験のあるホースマンにぶつけたことがあった。
彼らの答えに共通していたキーワードは「成長力」だった。
2月や3月の前哨戦よりも、1冠目の皐月賞よりも、「成長して強くなった」と感じさせる馬だけがダービーを勝つことができるのだ。
今年の第87回日本ダービー(5月31日、東京芝2400m、3歳GI)で大本命になると見られているコントレイル(牡、父ディープインパクト、栗東・矢作芳人厩舎)も、右肩上がりの成長力を見せている。
それを端的に示していたのが、皐月賞を勝った直後の矢作調教師の言葉だ。
「走り方がよくなりました。前輪駆動だったのが、トモがしっかりしたことによって、四輪駆動になりましたね」
車の後輪がパワーアップ。
コントレイルが外厩として過ごす、鳥取・大山ヒルズの齋藤慎ゼネラルマネージャーも同じように感じている。
「持って生まれた筋肉のバランスのよさはあったのですが、2歳の時はまだ幼さが残っていましたね。それが3歳になると変わりました。皐月賞のレース後、福永騎手と電話で話したのですが、返し馬にトモから入って行ったそうです。確かに昨年より四肢のバランスはぐんとよくなっていると思います。それで走りにも、さらに力強さが出ているのでしょうね」
「前輪駆動」だった2歳のときでさえ、東京スポーツ杯2歳ステークスを2歳の日本レコードで制し、つづくホープフルステークスを、最後の5、6完歩は流すようにして2着馬を1馬身半突き放した。
その大器が「四輪駆動」になった。推進力を生むのはトモの力であり、車の後輪がパワーアップしたことで走りが一段と進化したわけだ。皐月賞で見せた強さにも納得が行く。