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「前輪駆動」から「四輪駆動」へ。
成長する王者コントレイルの原点。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/05/27 11:50
コントレイルが育ったノースヒルズ清畠の放牧地。牡馬と牝馬のグループに分かれて午前10時から約20時間放牧される。
1カ月で15kg大きくなる大事な時期。
コントレイルは、どのようにして強くなったのか。それを探るべく、コントレイルの故郷を訪ねた。
コントレイルは2017年4月1日、新冠のノースヒルズで生まれた。そして、同年10月11日、そこから車で40分ほどのところにある中期育成施設のノースヒルズ清畠に移動した。翌2018年の秋、前出の大山ヒルズに移動して人を背中に乗せるようになるまでの1年弱の間、同世代の馬たちとここで過ごしたのである。
実は、ノースヒルズ清畠はそのとき開場したばかりだった。つまり、コントレイルは、ノースヒルズ清畠の1期生なのだ。キズナの初年度産駒も同じく1期生である。キズナ産駒のアブレイズ(フラワーC1着)やコルテジア(きさらぎ賞1着)などコントレイル以外も成果を挙げているのがこの世代の特徴だ。
中期育成の期間は、競走馬になる前の馬が、自由に大地の草を食べることのできる最後の期間である。1日に500gほども体重が増える、大切な成長期だ(つまり1カ月で15kgも体が大きくなるのだ)。
10haの放牧地に10頭の馬。
ノースヒルズの福田洋志ゼネラルマネージャーに案内してもらい、放牧地に入った。
それぞれ10haほどもある放牧地は実に広々としている。南に青いひろがりを見せる太平洋から寄せる海風が心地いい。
ひとつの放牧地には10頭前後が放牧されており、なかには、私たちに気づいて寄ってくる馬もいる。しかし、飽きるとまた仲間たちのもとに戻り、脚元の草をのんびりと食べはじめる。
この広い放牧地のほぼ全域に馬たちの蹄跡がついている。自然の起伏もあるので人間の足だと歩くだけで結構疲れるのだが、そこを馬たちは、草を食べながら、ずっと歩いている。
新冠の本場に中期育成施設があったときは、4haの放牧地に8頭を放していたという。単純計算でも、清畠では、1頭あたりの放牧面積が倍ほどになった。運動量も多くなるし、質のいい草の量も十分に足りるようになった。