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靭帯断裂から復帰目前ザニオーロは、
コロナ後のローマとイタリアの旗頭。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/05/25 18:00
颯爽としたプレーぶりのザニオーロ。かつてのトッティのようなエースとして君臨するか。
足の筋肉が1cmしか減少しなかった。
そして5月7日、感染ペースの鈍化に伴い練習場での個人トレーニングが解禁となると、ザニオーロもクラブの練習場トリゴーリアに姿を見せたのである。理想的タイミングで、陸トレに移行することができた。
現在は感染症拡大防止のための法令に基づき、室内プールでのリハビリや複数コーチがついたトレーニングは制限されているというが、回復プロセスは順調。5月18日には遂にボールも蹴ってみたという。
マリアーニ医師は『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の取材に対し、「我々の提示した回復手順に忠実に従ってくれていた。彼は生まれながらの才能の持ち主だから、ボールを蹴るまでに回復していても全く驚かない」と太鼓判を押している。
6年前に靭帯断裂を経験したケビン・ストロートマン(現マルセイユ)が、リハビリの段階で足の筋肉を7cmほど細くしてしまった一方、ザニオーロの場合はわずか1cmの減少にとどまっていたのだという。
若手に切り替わりつつある中で。
「ザニオーロは代表にとって重要な選手。あと1年もあれば故障から(パフォーマンスを)回復できるし、経験値も高くなる」
マンチーニ監督も延期されたEUROを見据えて期待を寄せる。フェデリコ・キエーザ、ニコロ・バレッラ、ロレンツォ・ペッレグリーニ、ジャンルイジ・ドンナルンマ……と、フル代表での中核は若手へと切り替わりつつある。その軸の1人として構想に入っているザニオーロを失わずに済み、経験の上乗せさえ期待できるようになった。指揮官にとって延期はむしろ、願ってもないことだったかもしれない。
「酷い時期は過ぎた。日に日に良くなっている」
ザニオーロは地元紙のインタビューにこう答えた。コロナ禍の影響で衰退の懸念もされているサッカー界だが、その後の活躍に希望を置いて彼はトレーニングを積んでいる。
延期となったEURO2021でスターダムにのし上がり、アフターコロナのカルチョの世界を牽引するのは、この若者になるかもしれない。