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マンU“トレブル”の現場で見たもの。
カンプノウの奇跡、伝説の3分間。

posted2020/05/26 07:00

 
マンU“トレブル”の現場で見たもの。カンプノウの奇跡、伝説の3分間。<Number Web> photograph by AFLO

トレブル、カンプノウの奇跡、または悲劇……。この試合を彩る言葉の数々が、その高揚を物語っている。

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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 少なくとも20世紀の常識において、カップ戦のファイナルは手堅くて動きの少ない試合が大多数を占めていた。ヨーロッパのクラブナンバー1を決めるチャンピオンズカップのファイナルなら、なおさらオープンな試合にはなりにくい。

 チャンピオンズリーグに大会の名称が変わった1990年代前半以降も、ロースコアの攻防が繰り広げられていった。どのチームの監督と選手たちも、最小限のリスクで勝利を得ようとする。ファイナルでの敗退はダメージが大きく、失うものがあまりにも多い。

 1999年5月26日に行われたチャンピオンズリーグ決勝は、まさにそういった一戦だった。スペイン第2の都市バルセロナのカンプノウで、マンチェスター・ユナイテッドとバイエルン・ミュンヘンが対峙した。

いなすバイエルン、苛立つイングランド記者。

 開始6分にマリオ・バスラーのゴールで先制したバイエルンは、百戦錬磨の経験者たちがゲームをコントロールしていく。

 最終ライン中央にローター・マテウスがいて、セントラルMFにシュテファン・エッフェンベルクがいて、その他のポジションにも新旧のドイツ代表をズラリと揃えているのだ。ロイ・キーンとポール・スコールズの出場停止で中盤の編成に苦しむ相手をいなすのは、バイエルンにとって難しいリクエストではない。

 メインスタンド上部の記者席を割り当てられた僕は、イングランドの記者に囲まれるような配置で試合を見ていた。0-1のまま試合が進んでいくと、彼らは明らかに苛立っていった。いつもとは違うポジションを任されたデイビッド・ベッカムやライアン・ギグスがミスをすると、テレビの電波に乗せられない、活字にもできない言葉で罵った。

 マンチェスター・Uのアレックス・ファーガソン監督は、67分と81分に交代のカードを切った。だが、スコアは変わらない。僕の周りが騒がしくなる。荒っぽい英語が飛び交う。

【次ページ】 「監督も選手もくそったれだ!」

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