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柱の陰からは工藤監督の視線が。
キャンプで目を引く5人の育成選手。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2020/02/16 08:00

柱の陰からは工藤監督の視線が。キャンプで目を引く5人の育成選手。<Number Web> photograph by Kyodo News

育成の尾形崇斗と、それを見つめる工藤公康監督。「ソフトバンクの育成」はもはやブランドだ。

ルーキー大関は「本当に育成なのか」。

 直後、同じマウンドに今度は背番号122の左腕が上がる。

 仙台大学から育成入団したルーキー・大関友久投手(186cm90kg・左投左打)のピッチングが始まる。

「ほら、ああやって首を使って一、二塁にランナーがいる想定で投げているでしょ。クイックも出来るし、大型左腕なのに意外と器用。クロスファイアーもきびしいし、スライダーも鋭い。これで本当に育成なのか……って、そういうレベルですよ」

 別の球団関係者は、こんな表現をしてくれた。

「リーグ戦が終わって、スタンドで弁当食べて、ほかの選手たちはブラブラしてるのに、彼だけは次の試合をジ~ッと見て、メモまでとってました。勉強熱心ですよ。そういう選手には、上から頭ごなしにものを言うような指導をしても心が離れていくだけ。言葉を尽くして納得ずくで練習してもらうことで、健全な成長が期待できる。

 選手に合った指導法ってものがあるはずなんです。そういう意味でも、選手のことをいちばん知っている担当スカウトが、3年から4年は選手の育成のサポートをする。絶対に必要なことだと考えています」

工藤監督がじっと見つめていた。

 トビラひとつ隔てただけの室内練習場では、育成4年目の背番号141・清水陸哉(京都国際高、185cm83kg・右投右打)と、2年目の背番号142・中村宜聖(西日本短大附、184cm88kg・右投右打)、2人の「大砲候補」がマシンバッティングだ。

「おお、いいぞ、今のスイング! だいぶいい形で振れるようになってきたな!」

 藤本博史三軍監督のダミ声が飛ぶ。

 まだバットの芯で捉えられない打球のほうが多いのに、打ち損じについては、一切触れない。

 ポイントは、ただ一点。全身の連動を利して、渾身のスイングが出来ているかどうか。そこだけだ。

 もう一度、トビラを開けてブルペンに戻って、ハッとした。

 マウンドでは、育成左腕・大関友久投手の懸命なピッチング練習が続いていて、そのクロスファイアーを轟音響かせて捕球した捕手の斜めうしろには、柱の陰に身をひそめるようにして、育成ルーキーのピッチングに見入る工藤公康監督の姿があった。

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