砂川リチャードの感覚的な指名理由。

　一軍メンバーの内野守備練習で、「三塁」の位置に大御所・松田宣浩と共に守っているのが、背番号127・砂川リチャードだ。

　沖縄尚学高から入団した今季3年目の育成選手。189cm112kgの巨体を利した圧倒的な長打力を、王貞治会長にも見込まれてA組入りしている新鋭だ。

　次のプレーへの切り換えの甘さをコーチから指摘されながらも、甲斐捕手からのビュンと伸びる送球にもきっちり反応して、一軍独特の緊張感に気おくれしているような素振りすら見せない。

「足が強い。肩が強い。それに、あのガタイとパワーでしょ……公式戦の打率なんか、2割もなかったと思いますけど、夢を語れるヤツだなと思ったので、獲ろうということになって」

　球団関係者の語る育成指名のいきさつも、他球団からは聞かれないたぐいの感覚的なものだ。

支配下と育成の方針の違い。

　投の大御所・和田毅の後のブルペンのマウンドに上がった背番号120番。

　こちらは福島・学法石川高から育成入団3年目の尾形崇斗（181cm83kg・右投左打）だ。

「投げる馬力はあったので、勢いだけで投げていたのが、フォームもよくなってようやく自分の進む道が見えてきたところですね」

　このキャンプの序盤に、シートバッティングで一軍クラスを抑えて、ここまでA組に踏みとどまっている。

「支配下ドラフトは、戦力になってくれないと困る選手ということになりますけど、“育成”のほうは、飛び抜けたものが1つあって、そこにこういうものを加えていけばこんなふうになるんじゃないのか！　そんな“夢”を託せる選手でちょうどいいと思ってます。育成を獲るって、つまり『想像力』ですから」

　高校生の頃は、体を振って反動を使って力任せに投げたがっていた尾形投手が、きちんと体を左右に割ったフォームから、プロらしい力感の速球を捕手のミットに叩きつける。

【次ページ】　ルーキー大関は「本当に育成なのか」。