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限りなく健常者に近い選手が出場?
車いすバスケがパラ五輪から除外か。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2020/02/04 18:00
2月2日、有明アリーナの完成披露式典で行われたデモンストレーションで円陣を組む車いすバスケ男子日本代表。
クラス分けの見直しは容易ではない。
また、クラス分けの見直しを、とは言っても、それは容易なことではない。
クラス分けは、例えば医師の診断書に基づいて機械的に行なわれるわけではない。公認の資格を持つクラス分けの委員が、選手の練習や試合でのプレーを観察し、選手が自身の備える身体機能を用い、どのように動作しているかを評価する過程を経なければならないからだ。
だが、各国代表チームが出場する大会は、現時点では求められる期間内に予定されていないこと1つとってみても、困難であることは想像がつく。
おりしも2月2日、車いすバスケットボールが行なわれる有明アリーナの完成披露式典が開催された。
選手の取材対応はなく、男子日本代表の及川晋平ヘッドコーチがこう語っている。
「この段階ではコメントできません。東京に向けてぶれることなく、この夢の舞台でメダルを獲得できるようにしたい」
現場は強化に集中するしかない。
「障がいとは何か」というテーマ。
解決に至らなければ東京大会から除外される可能性があることも大きな問題だが、何よりも、クラス分けの見直しによって、参加資格を失う選手が現れる可能性があることも見逃せない。すでにイギリスやカナダなど各国のメディアは、その点を指摘している。
つまり、二重の意味で、選手は不安定な状況に、いきなり押し出されることになった。
IPCの基準との相違を指摘され続け、「対応してきた」とはしているが根本的に解決できなかったIWBFの責任は重い。
ただ、選手はルールに基づき、クラス分けを受け、プレーをしてきた立場である。4年に一度の大舞台を目指し、そして大会が間近に迫っている今になっての出来事だ。参加資格がないとして除外されることがあれば、失意は計り知れない。
また、今回浮上した問題は、「障がいとは何か」というテーマもあらためて突きつけることになった。
健常者に近い程度に障がいが軽く、運動能力もある、ただ健常者の大会には出られない、そうした選手はどうすればよいのか。
困難な中、解決の道筋は簡単ではないが、それでも今後、打開策を模索していくことになる。