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リスグラシューは圧勝、他は大混戦。
こんなに票が割れるJRA賞は珍しい。
posted2020/01/15 07:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yasuo Ito/AFLO
昨年、2019年の年度代表馬はリスグラシュー(牝6歳、父ハーツクライ、栗東・矢作芳人厩舎)に決定した。
豪州の名手ダミアン・レーンを鞍上に迎えた宝塚記念では掛かり気味に先行し、牡馬勢を3馬身突き放す快勝。直線が173mしかない豪州ムーニーバレー競馬場のコックスプレートでは、後方から鮮やかな差し切り勝ちをおさめた。
そしてラストランの有馬記念を5馬身差で圧勝。国内外のGIを3勝し、合計274票の記者投票のうち271票を獲得する、文句なしの受賞だった。
22戦7勝、2着8回、3着4回という通算成績が示しているように、高いレベルで安定した強さを発揮しつづけた。
しかし、2歳時や3歳時は勝ち切れず、阪神ジュベナイルフィリーズ2着、桜花賞2着、オークス5着、秋華賞2着と、大舞台では惜しいレースがつづいた。
「この馬は旅をしたことで成長しました」
転機となったのは、4歳時の2018年のエリザベス女王杯と、その後の海外遠征だった。女王杯では、「マジックマン」の異名を取るジョアン・モレイラを背に、舞うような末脚で前を差し切り、GI初制覇を遂げた。
翌12月の香港ヴァーズでもモレイラを背に2着。'19年4月の香港クイーンエリザベス2世カップではオイシン・マーフィーの手綱で3着と、海の向こうでも強さを見せた。
「この馬は旅をしたことによって成長しました」と矢作調教師。3歳時は東京への輸送でも大変だったというのに、香港へ2度、豪州へ1度の遠征を経て、レーンに「世界一を狙える」とまで言わしめる歴史的名牝になった。
令和最初の年度代表馬にふさわしい、圧倒的なインパクトを残した。