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なぜMLB移籍は「挑戦」なのか。
秋山、筒香が挑み、背負ったもの。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/01/11 11:50
筒香嘉智のメジャーでの年俸はDeNA時代の1.5倍。これを高いと見るか、そう変わらないと見るかは難しいところだ。
“メジャー挑戦”は死語にならない。
メジャーの日本人野手についてはよく「成功例が少ない」などと言われるが、過去のサンプル=実例そのものが少ないので、そういう言い方はフェアじゃない。
外国人枠がなく、カナダやメキシコ、ドミニカ共和国やベネズエラなどから全体の3割近くにあたる外国人選手が活躍しているメジャーでは、日本人選手は今でも圧倒的少数派である。
だから、“メジャー挑戦”という言葉はいつまで経っても死語にならないし、“メジャー挑戦”をする日本人野手はいずれも「次に来る日本人野手たち」への責任も背負ってしまうことになる。
「そんなのは日本人メディアの勝手な押し付けじゃないか」
それは否定しないが、同時に断言もしておきたい。
メジャーリーグの各球団や代理人は、過去の契約例をもとに交渉を進めるので、今まで“メジャー挑戦”を果たした日本人野手の多くの活躍の度合いが、秋山や筒香の契約交渉の際に「前例」となって考慮されたことを。
レッズもレイズも「リスクよりもリターンの方が高い」と見込んで秋山と筒香の2人と契約したのは間違いないだろうが、他の多くの選手同様、この投資が失敗に終わる可能性だってある。
だから、我々はそれを“メジャー挑戦”と呼ぶのだ。
千賀「日本とメジャーは別物」
「日本のプロ野球よりメジャーの方がレベルが上」というのが言い過ぎなら、ソフトバンクの千賀滉大投手が2017年のWBC後に話したように「日本とメジャーは別物」である。
それに順応する努力や厳しさはあって当然。そういう姿を取材を通して目の当たりにしてきた手前、それを単純に「メジャー移籍」などと呼べないのである。
青木がブルワーズの控え外野手から右翼の定位置を獲得した当時、ロン・レネキー監督(現レッドソックスコーチ)はこう言っている。
「何かとパワーが推奨される本塁打の時代だからこそ、ノリのような選手が目立ち、むしろ、チームから必要とされるのだと私は思う」