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小笠原満男が子供達に伝える主張力。
「違うと思うなら言葉にすればいい」

posted2019/12/22 08:00

 
小笠原満男が子供達に伝える主張力。「違うと思うなら言葉にすればいい」<Number Web> photograph by Hirokazu Ikeda

ブラジルの子どもたちのサッカーに触れて、かつての経験を回想した小笠原。勝つために必要なものを改めて実感したようだ。

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池田博一

池田博一Hirokazu Ikeda

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Hirokazu Ikeda

「Eu(エウ)!」

 ピッチ上にポルトガル語が飛び交う。そこかしこで15歳のブラジル人の子どもたちが、目の色を変えて叫んでいる。

 今年8月、小笠原満男は鹿島アントラーズジュニアユースが参加したブラジルでの日伯友好カップに同行し、相手となった現地強豪クラブの選手たちに釘付けとなった。

「Eu(エウ)って、ポルトガル語で“私”という意味なんだけど、浮いたボールをヘディングで競り合うときに必死に叫ぶことで、“俺が競るんだ”っていう強い気持ちを感じた。日本だとセンターバックの選手は競れるけど、それ以外は跳んで競る振りをすることが多い。でも、ブラジルの選手たちは、攻守に渡って100%で競り勝とうとする。競り勝てば、ボールを飛ばす飛距離もある。空中戦のすごみが違った」

 根っこは、“負けない、俺がやってやる”という気持ちだ。誰もがそれを前面に押し出すがゆえ、そこかしこで激しい球際の戦いが繰り広げられる。特に競り合いにおいて、目を見張るものがあった。小笠原自身、実際に自分の目で子どもたちの主張を見て、改めてサッカー王国ブラジルのすごみを体感した瞬間でもあった。

「“俺にパスを出せよ”っていう要求がとにかくすごい。日本人だとフリーでも呼ばないことがある。そもそも、ボールを欲しがる選手がいなければ、パスも回らない。プレッシャーが早いなかで、ビビってボールを受けないで隠れちゃったり、フリーなのにもらおうとしなかったり。この差はでかい」

代表選手に囲まれた新人時代。

 小笠原自身、岩手県の大船渡高校を卒業して鹿島アントラーズに加入した当時、ライバルとなるチームメイトは、日本とブラジルの代表選手たちだった。自分という存在をアピールするために、紅白戦に出るために、試合に出るために。とにかくアピールするしかなかった。

「俺がアントラーズに加入した当時は、本田泰人さん、秋田豊さん、奥野僚右さん、ジョルジーニョ、ビスマルクをはじめ錚々たる選手たちがいた。それでも、関係なく自分が求めることを声に出した。だからかなぁ、いつも喧嘩ばかりだった(笑)」

【次ページ】 ぶつかることによって多くを学ぶ。

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