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フェデラーが絡まない片手打ち決戦。
チチパス対ティームの新鮮な興奮。
posted2019/11/21 19:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
テニスプレーヤーを分類するには幾通りかの方法があるが、基本中の基本はこれだろう。
右利きか左利きか、そしてバックハンドが両手打ちか片手打ちか。
いずれも後者が少数派で、この少数派が存在するからこそツアーはエキサイティングで奥深い。
ラファエル・ナダルが左利きでロジャー・フェデラーが片手打ちだったということは、比類なき最強のコントラストを生み出した。奇跡のライバル関係に欠かせない要素だったに違いない。
左利きはともかく片手打ちはかつて主流であり、30年前でもトップ10のうち過半数が片手打ちだった。時代とともにパワーと安定性に勝る両手打ちが主流になっていったが、片手打ちにはショットの回転や角度、緩急などを駆使しやすいというメリットがあり、なんといっても見ていて美しく、ワクワクさせる。サーブ・アンド・ボレーの衰退とともにその減少を嘆くオールドファンは少なくなかったはずだ。
共通点は片手打ちバックハンド。
先週の日曜日、男子のシーズン最終戦となる『ATPファイナルズ』の決勝が行なわれ、26歳のドミニク・ティームと21歳のステファノス・チチパスが頂点を争った。ふたりの共通点はその片手打ちバックハンドだ。
最終戦での片手打ち同士による決勝は、ピート・サンプラスがボリス・ベッカーを破った1996年以来。グランドスラムとマスターズの決勝に視野を広げても、この13年の間にたった3度しかない。
今年のインディアンウェルズでのフェデラー対ティーム、2017年のインディアンウェルズと2014年のモンテカルロでのフェデラー対スタン・ワウリンカ。ちなみに2007年から2013年の間には一度もない。ナダルとノバク・ジョコビッチがほとんどのビッグタイトル争いに絡んでいたことを考えれば、無理もない。