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原辰徳インタビュー(2)坂本勇人、岡本和真への「非情采配」の真意。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/09/10 11:00
真剣な眼差しで練習を見る原監督。同一球団でブランクを空けて3回開幕から監督を務めるのは史上3人目だ。
丸がノートに書いたことが伝達される。
――それが試合での強いスイングにつながり、坂本選手のホームランの増加にもつながっていると。その辺に丸選手が加入した見えない影響があるわけですね。
「すごく大きいと思います。それとよく彼がノートに気づいたことを書いているでしょ。この投手の真っ直ぐはこういう真っ直ぐだとか、球種はこういう種類があって、こういうスライダーがある。スライダーというのもいろいろあって、誰々のスライダーに似ているとか、そういう表現を使って書き留めていますよ。それで実際に打席に立つと次の打者や他のバッターにそれを伝達して、それを聞いたバッターがまた伝達する。みんなが伝達するようになりましたね」
――そういうシーンはよく見ますね。
「それが丸が入ったことで日常的になった。丸効果じゃないですかね」
坂本へ送りバントのサイン。
――フォア・ザ・チームということですね。そういう意味では監督が復帰して一番、印象に残っている采配は、開幕シリーズの広島戦で出した坂本選手への送りバントのサインだったのではないかと思っています。これもフォア・ザ・チームという監督の一義的な考えをチームに浸透させる大きなカギではなかったかと思います。
試合は3月30日、敵地・マツダスタジアムでの開幕2試合目。4対2と2点リードの9回無死一、二塁から原監督は坂本に送りバントのサインを出し、坂本がこれを決めて駄目押し点を奪った。この場面はこの連載でも直後に指摘したが、100の言葉よりもこの1つの采配が、原野球をチームに浸透させるものとなったはずだが、監督自身はこの采配をどう感じているだろうか……。
「そういうシチュエーションの中でこれ(送りバント)がベストだなと思ったんですね。思ったんでしょう。だからそういうの(チームに自分の野球、自分の考えを浸透させること)を狙っていたのでもなんでもないし、自然の中で『坂本だけど、しかしここは次が丸だから、送ってもらおう』と。『ここで1点取ったら、まあ勝つ確率はうんと上がるな』ということでそういう作戦をとった。采配、用兵というのはそういうものだし、そうでなければならないと思っています」