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原辰徳インタビュー(2)坂本勇人、岡本和真への「非情采配」の真意。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/09/10 11:00
真剣な眼差しで練習を見る原監督。同一球団でブランクを空けて3回開幕から監督を務めるのは史上3人目だ。
「心の中ではガッツポーズをしていました」
――あえてここで坂本選手に送りバントをさせることで、というようなことはなかった?
「そうですね。まあ、それがたまたま勇人であったということです。しかし、たまたま勇人であったことがチームにとっては大きいなあ、というのは僕の中ではありましたね。あのシチュエーションで、最善策を選択した時に打席にいたのが勇人だった。僕は心の中ではガッツポーズをしていましたね! 最善の策として選択した作戦が、たまたま勇人への送りバントであった、勇人でこの作戦が使えたというのが最高だった。それは選手の前で言う必要はないんだけど、僕の心の中ではカッとガッツポーズをしていましたね」
――根本でグラウンドにおける用兵、作戦は常に変わらないということですね。
「一緒。それは一緒。それは目的は勝つことだから。選手を幸せにすることじゃないから。我々は目的は勝つことで終始一貫、変わらないから。そうすることで選手も結果的には幸せになれるんだから。絶対そう。だから僕は『個人軍』はダメだ、と。『巨人軍』だと。巨人軍は勝つために戦う。そのために試合を進めていくということなんだから。なんということはない。その部分はね。目的はこれだから、そこは変わらない」
「全てに於いて勝つこと以外にない」
――あの試合も坂本選手がバントをあっさりと決めて点が入り、結果として試合に勝った。広島との敵地での開幕シリーズを勝ち越したことから、今シーズンのこれまでの戦いがスタートしている。
「そうですね。そういうことですね」
――監督は勝つことで選手を幸せにして、それがチームの実績にもつながる。
「勝つことですよ。目的は勝つことです。もうそれ以外、勝負の世界はないんです。そのためにどういう風にチームワークを高めていったり、個人技量をあげていく。そのためには色んなものがある。でも目的はなんぞや、といえば勝つこと。全てに於いて勝つこと以外にないんです。勝つためにどうするか、です」
「個人軍」ではなく「巨人軍」と、勝利への選手の献身を求めることで、チームを引っ張る原野球。それが巨人の伝統であるとすれば、その伝統をどうやって次世代のリーダーたちに受け渡していくのか?
原監督のロングインタビュー最終回となる第3回では次世代のリーダー候補・阿部慎之助捕手への思いと、原流のリーダー論を聞く。