酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園の観客は本当に増えてる?
実はイチローがいた年が夏の1位。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/10 08:00
2018年夏の甲子園決勝、金足農業vs.大阪桐蔭という注目校同士の対決もあって甲子園は超満員となった。
センバツで1位の大会は……。
甲子園の高校野球の観客動員は増えているように思えるのだが、実際はどうなのか?
この観客動員について、正確な数字はない。1970年代末から主催者が発表しているが、発表しない年もあるし、その数字も下3桁が0のいわゆる「丸い数字」だ。
また外野席は昨年夏まで無料だったのだが、この数字が含まれているかどうかも不透明だ。さらに甲子園は入れ替えなしだから、“1試合ごとの入場者数”も判別しづらかったりする。
わからないことばかりではあるが、今手元にある数字でランキングにしてみた。
1試合当たりの平均観客数のランキング、そして本塁打数、優勝、準優勝校、主な出場選手や各大会の出来事も紹介しよう。
<春の甲子園 平均観客動員5傑>
1位:1978年/平均2万0241人
(29試合 58万7000人 10本塁打)
優勝:浜松商(静岡)、準優勝:福井商(福井)
主な選手:川又米利(早実)、西田真二、木戸克彦、金石昭人(PL学園)、津田恒美(南陽工)
意外なことに数字が判明している限りでは、この年の春の平均観客動員が一番多かった。この大会では2つの大記録が生まれている。前橋(群馬)の松本稔が3月30日、比叡山(滋賀)を相手に甲子園での高校野球が始まって以来となる「完全試合」を成し遂げた。
前橋は東大進学者もいるという進学校で、「文武両道」の大活躍に大いに沸いた。そして同じ群馬の桐生、阿久沢毅が王貞治(早実)以来となる20年ぶりの2試合連続本塁打をマーク。この2大記録で注目度がぐっと増して、観客が詰めかけたのだ。
2位はドカベン香川、3位はPL連覇。
2位:1979年/平均1万8793人
(29試合 54万5000人 18本塁打)
優勝:箕島(和歌山)、準優勝:浪商(大阪)
主な選手:香川伸行、牛島和彦(浪商)、小早川毅彦(PL学園)、岡崎郁(大分商)、森浩二(高知商)
箕島旋風が吹き荒れた大会。準決勝では前年夏の覇者PL学園と対戦。小早川毅彦が4番に座る強力打線を延長10回サヨナラ勝ちで下し、決勝は“ドカベン人気”が沸騰した香川伸行、牛島和彦のバッテリーの浪商と8-7、ルーズヴェルトゲームを演じて勝利した。
ちなみにこの試合では箕島の北野敏史がサイクル安打を記録するおまけまで付き、日本中が熱狂した。
3位:1982年/平均1万7345人
(29試合 50万3000人 13本塁打)
優勝:PL学園(大阪)、準優勝:二松学舎大付(東京)
主な選手:荒木大輔(早実)、吉井理人(箕島)、彦野利勝(愛知)、川相昌弘(岡山南)
PLはこの年、春の連覇がかかっていた。それとともに盛り上がったのは、11年ぶりの「東京vs.大阪」対決だったのが大きいようだ。テレビも東京、大阪でそれぞれ「大阪(東京)が相手ですが」という街頭インタビューをしていたほど。
なお試合は15-2とPL学園の圧勝に終わった。アイドル的な人気となっていた早実の荒木大輔は、2回戦で川相昌弘がエースの岡山南を下した。