野球善哉BACK NUMBER
仙台育英流の「最後まで全力」。
コールドのない甲子園で19点差勝利。
posted2019/08/09 18:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
ポテンヒットすら二塁打になってしまう。
大会4日目の第2試合に登場した仙台育英(宮城)の攻撃には感嘆させられた。
6点リードで迎えた5回裏のことだった。
敵失と内野安打にタイムリーでまず2点を追加。さらに1死一、三塁の場面で4番・小濃塁が放った打球はレフトとセンターの間にポトリと落ちるテキサスヒット。一塁走者が三塁を陥れた時、打者走者の小濃は悠々と二塁へと到達していた。
この回積み重ねた得点は10。本塁打0でのビッグイニングは打撃力だけではなく、見事な走塁があってこそだった。
これは、就任2年目の須江航監督が「新しい仙台育英を作ろう」とチームを鼓舞しながら仕上げてきた強さと言えるだろう。選手たちはわずかな隙を見逃さず次の塁を狙っていく。
須江監督はいう。
「昨年から、守備と走塁をきっちり作ろうと取り組んできました。その文化が今のチームに残っています。野手の間に落ちた当たりやライナー性の打球に対する決まり事があるんですが、選手たちがそれをやりきってくれました」
気がつけば点差は19点に開き、仙台育英は20−1で初出場の飯山(長野)を下した。個々の選手の能力差もあったが、守備・走塁意識の影響も大きかった。
甲子園にはコールドがない。
これだけの点差がつくと必ず付いて回るのが、公立校を圧倒する強豪私学に対して反発を感じる人が現れることだ。
甲子園にはコールドゲームがないうえに、高校野球ではゲームセットまで全力でファイトすることを良しとする空気がある。仙台育英は5回終了時点で16点のリードを奪っていたが、その状況で手を抜いてしまうと「相手に失礼」にあたるので、戦い方はかなり難しかったはずだ。