酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園の観客は本当に増えてる?
実はイチローがいた年が夏の1位。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/10 08:00
2018年夏の甲子園決勝、金足農業vs.大阪桐蔭という注目校同士の対決もあって甲子園は超満員となった。
ここ近年で注目された大会は……。
4位:2016年/平均1万7065人
(31試合 52万9000人 16本塁打)
優勝:智弁学園(奈良)、準優勝:高松商(香川)
主な選手:松尾大河(秀岳館)、高田萌生(創志学園)、高山優希(大阪桐蔭)、高橋昂也(花咲徳栄)
この大会は記憶に新しいだろう。サヨナラ勝ちが史上1位タイの6試合。接戦の連続が人気を呼んだ。高松商は2009年の清峰(長崎)以来となる公立校の優勝を狙ったが、延長11回、サヨナラ負け。優勝候補と言われた大阪桐蔭は2回戦敗退。21世紀枠同士の釜石(岩手)vs.小豆島(香川)の息詰まる投手戦など、好ゲームが多かった。
5位:1986年/平均1万6935人
(31試合 52万5000人 19本塁打)
優勝:池田(徳島)、準優勝:宇都宮南(栃木)
主な選手:近藤真市(享栄)、高村祐(宇都宮南)、飯田哲也(拓大紅陵)、中村良二(天理)
この年は傑出した投手があまりおらず、逆転劇が多かった。そんな中で新湊(富山)がノーマークから1回戦で大会屈指の好投手近藤真一を擁する享栄(愛知)を破る金星、以後、拓大紅陵、京都西を下し、準決勝に進出。富山勢のベスト4は春夏通じて初。“新湊旋風”と呼ばれた。
夏の平均1位はイチローも出た大会。
<夏の甲子園 平均観客動員5傑>
1位:1990年/平均1万9354人
(48試合 92万9000人 39本塁打)
優勝 天理(奈良)、準優勝:沖縄水産(沖縄)
主な選手:内之倉隆志(鹿児島実)、南竜次、谷口功一(天理)イチロー(愛工大名電)
沖縄県勢史上初の全国制覇なるか、で注目された大会。天理との決勝戦は投手戦になったが0-1で敗れる。天理は3年の南竜次、2年の谷口功一の2人がマウンドに上ったが、沖縄水産は神谷善治がほぼ1人で投げ抜き4連投で力尽きた。
2年生の鈴木一朗ことイチローは愛工大名電(愛知)の左翼手だったが、1回戦で天理に6-1で敗れている。
2位:1991年/平均1万8750人
(48試合 90万0000人 37本塁打)
優勝:大阪桐蔭(大阪)、準優勝:沖縄水産(沖縄)
主な選手:松井秀喜(星稜)、大野倫(沖縄水産)、礒部公一(西条農)、副島孔太(桐蔭学園)
前年に続き、沖縄水産が悲願の優勝をかけて決勝に勝ち上がる。対するは創部4年目の大阪桐蔭。沖縄水産のエース大野倫は、地方大会から肘を痛めていたが痛み止め注射を打って投げ続け、773球で力尽きる。今年の春、私は沖縄で大野倫に話を聞いたが「前年、神谷先輩が苦しくても投げ続けているのを見て、僕もそうしないと、と思った」と話した。
大野は右肘を剥離骨折。これがきっかけで大会前のメディカルチェックが始まる。まだブレーク前だったが星稜(石川)の松井秀喜も甲子園でプレーし、準決勝で大阪桐蔭に敗退。