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大坂なおみもセリーナも3回戦敗退。
歴代女王でも苦しむ全仏の環境とは。
text by

山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/06/03 11:45

全仏オープン3回戦でシニアコバに完敗した大坂。年間グランドスラムはならなかったが、ウィンブルドンで雪辱を期す。
かつてヒンギスも苦戦した全仏。
試合そのものの苛酷さに加え、ここの観客は自分たちのマナーはさておき選手のマナーに厳しく、生意気な態度をとればこの観客に潰されてしまうことすらある。
かつて天才少女と呼ばれたマルチナ・ヒンギスは、16歳だった1997年に3つのグランドスラム・タイトルを手にするが、全仏オープンだけは準優勝に終わった。
今回の大坂と同じく、初めて第1シードとして臨むグランドスラムだった。2年後に再び決勝に駒を進めるが、激しいブーイングを浴びながらシュテフィ・グラフに敗れ、結局ヒンギスは生涯グランドスラムを達成することができなかった。
大坂の態度や性格が観客の反発を買ったところは目にしたことがないが、大坂ならこの難しい観客たちももっと自分の味方にできるに違いない。フランス語での簡単な挨拶くらいから始めるのも手だろう。
次なる舞台はウィンブルドン。
来年までに課題はたくさん与えられたが、それよりまずは次のウィンブルドンだ。
記者会見の中で、「バイバイ。悪いけど、あなたたちと別れることは寂しくないわ」と冗談めかして微笑んだが、もちろん世界のメディアはウィンブルドンでも大坂に注目する。
パリで苛まれた緊張感から逃れることはできるのか。今年の年間グランドスラムの夢は消えたが、1位を維持したいというプレッシャーはあるだろう。芝は大坂に合っているとも言われるが、決して慣れ親しんだサーフェスではない。その中で、皆が必死で大坂を研究し、倒しにくる。
女王として、チャレンジャーとしての戦いは続く。
