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大坂なおみもセリーナも3回戦敗退。
歴代女王でも苦しむ全仏の環境とは。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/06/03 11:45
全仏オープン3回戦でシニアコバに完敗した大坂。年間グランドスラムはならなかったが、ウィンブルドンで雪辱を期す。
パワープレーヤーにとって敵となる赤土。
第2セットはシニアコバの粘り強さが増し、大坂のウィナー級のショットもカットしてスライス回転で返してくる。これに苦しめられた。
大坂のようにパワーを最大の武器とするプレーヤーにとって、そのパワーを吸収する柔らかな赤土の絨毯は敵だ。ラリーの主導権を握っているのは確実に大坂だが、決め球が決まらない。決まらないどころか、入らなくなり、自滅の一途。威力を殺したバウンドの低いショットに対して、大坂はうまくパワーを乗せることができずにコントロール力を失った。38本ものアンフォーストエラーはシニアコバの約3倍にのぼる数だ。
いつものように無理して笑顔を作ってみても、ベンチでタオルをかぶってみても、何も功を奏さなかった。なぜミスの連鎖を止められなかったのだろうか。
“最強女王”セリーナも敗戦。
大坂自身が敗因として挙げた「疲労」は確かにあったのだろう。しかし得意のハードコートなら修正できたかもしれない。球足が遅く、ラリーが長く続くクレーコートは、1ポイントをもぎ取るために体力と気力と頭脳を要する。体も心も頭も疲れ果てるサーフェスだ。
そして、疲れたという意識、疲れることへの不安を抱いた途端、つまり自信を失った途端、そこからの戦いはさらに困難を深める。
大坂との準々決勝での対決が予想されていたセリーナ・ウィリアムズもまた、世界ランク35位の20歳ソフィア・ケニンに敗れた。23回のグランドスラム優勝を誇るセリーナも、この大会は3度にとどまっている。
「苦手」という言葉は憚られるが、史上最強女王にとってもまたクレーが楽な場所ではないことは確かだ。加えて、出産後の復帰から1年以上が経ってもまだ元の体と自信を取り戻せていない現状では、勝ち進むことができなかった。
肉体的、精神的な成熟度が求められるサーフェスともいえるだろう。