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大坂なおみもセリーナも3回戦敗退。
歴代女王でも苦しむ全仏の環境とは。
posted2019/06/03 11:45
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
スポーツの舞台で<魔物が棲む>場所はいくつもあるが、テニスにおけるクレーコート、ローランギャロスもその1つだ。世界1位の大坂なおみは、3回戦で世界ランク42位のカタリナ・シニアコバに4-6、2-6で完敗した。最近の負け試合の中でもこれほどひどい負け方は珍しい。3試合連続の逆転勝ちはならず、初の3回戦突破も叶わなかった。
負けてあらためて大坂は、苦しかった胸の内を吐露した。
「他のグランドスラムとは違う感じだった。他はもう少しリラックスして楽しむことができたけど、ここではずっと何かに縛られているような感じ。眠っているときですら緊張しているっていうか。多分、それで疲れたのかもしれない。ストレスから頭痛も感じた。ただ、疲れていたことを強調すれば言い訳に聞こえるから、あまり言いたくない。だって彼女はとてもいいプレーをしていたと思う」
チャンスにもピンチにも弱かった大坂。
第1セットの序盤、両者の格の違いは誰の目にも明らかで、右に左にアグレッシブなショットを繰り出す大坂に対し、シニアコバは拾うのが精一杯。大坂はウィナーやリターンエースでスタンドを湧かせ、第2ゲームで早くもブレークポイントを握った。ここはチャンスを逃したが、リードを広げるのに長い時間はかからないと思われた。
ところが、第6ゲームでもダブル・ブレークポイントを生かせず、逆に第9ゲームでこの試合初めて握られたブレークポイントをしのぐことができなかった。
この日の大坂はチャンスにもピンチにも弱かった。シニアコバのサービング・フォー・ザ・セットでは0-40から計4本のブレークポイントを握ったが、あと1ポイントを奪えず。逆にシニアコバは、守備一辺倒にも見える中でボールを深くコントロールし、ピンチでドロップショットなど勇気ある策を成功させ、ワンチャンスを生かした。
「チャンスがあると感じていた。彼女は1回戦も2回戦も苦しんでいたから、以前ほどの自信はないだろうと思った」というシニアコバは、この日の戦術について聞かれると、「深いボールで彼女をベースラインでプレーさせること、とにかくたくさん返して簡単にポイントを与えないこと。うまくいったと思うわ」と答えた。
その作戦通り、目論み通りだったのだ。