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エディーも皮肉る協会とクラブの対立。
ラグビー大国イングランドの混沌。

posted2019/05/28 10:00

 
エディーも皮肉る協会とクラブの対立。ラグビー大国イングランドの混沌。<Number Web> photograph by Getty Images

ラグビーイングランド代表を率いるエディー・ジョーンズ。2003年以来のW杯優勝を目指す。

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竹鼻智

竹鼻智Satoshi Takehana

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 日本ラグビーの「2019年以降」が、なかなか見えづらい。

 今年3月、日本代表強化の一環として発足したサンウルブズが2020年シーズンを最後にスーパーラグビー(国際リーグ戦)から除外されることが発表された。4月には2022年シーズンから3部制とする国内トップリーグ再編案が発表されたが、流動的な要素があまりに多い。代表活動でも、日本が参加意思を示していた新設の国際大会「ネーションズ選手権」にも、2022年の第1回大会から参加できるかどうか雲行きが怪しくなってきた。

 W杯開幕までいよいよ120日を切り、人々の興味は本大会における日本代表のパフォーマンスによりフォーカスされていくことだろう。その一方で、W杯以降の日本ラグビーについても、さらなる議論があっていいように思う。

 未来の日本ラグビーはどうあるべきか――。論点、改善点は数多挙げられるが、「世界のラグビーのいま」について見聞を広めるのも一理あるだろう。

 ここで、ロンドン在住のラグビージャーナリスト竹鼻智氏による「フットボールの母国にして世界一のラグビー大国イングランドの現状」を連載でレポートする。

「フェンスのどちら側から相手を見ていようとも、自分の目で見ているものは、常に正しいものに見えるものです」

 2015年11月、イングランド代表監督就任会見でエディ・ジョーンズ氏が述べた言葉だ。氏は、2007年から2年間、プレミアリーグ所属のサラセンズで指揮を執った経験があり、クラブ側からRFU(イングランドラグビー協会)との協働を経験している。

 ただ、これが本当の意味での協働だったのか、あるいは、利害関係が対立するステークホルダー同士の緊迫したやりとりだったのか――。氏の言葉の背景を理解し、皮肉を好むイングランドの記者たちは会見でこの言葉を聞き満足気な笑いを浮かべた。

 1995年、インターナショナル・ラグビー・ボード(IRB、現在の「ワールドラグビー」。サッカーでいうFIFAにあたるスポーツの国際統括団体)が、それまで貫いてきたアマチュア主義から、選手が給料を得ることができるプロ化を容認した。

 以来、イングランドでの代表チームとトップクラブとの関係は、必ずしも良好なものではない。

「クラブ対代表」の対立、隣国はサポート体制。

 理由は他ならず、代表選手の拘束時間を巡るクラブと代表との利害関係の対立からだ。クラブが大金を支払って主力として雇っている選手が、代表戦やその準備のためにクラブの大事な試合に出場できない。これを金銭により保証する、しない。

 代表合宿に呼べる期間や、代表での活動中の選手の負傷など、争いの元となる要素は、数多くある。

 では、この「クラブ対代表」という対立構造は、回避できない構造かと言えば、実はそうではない。

 例えば近隣のアイルランド、ウェールズ、スコットランドでは、それぞれのラグビー協会が、クラブがプロ化するための援助を様々な形で行なった。

 それは、クラブが選手とのプロ契約を行うための直接・間接的な金銭支援であったり、人材的な支援であったり、プロ化への道を進もうとするクラブをラグビー協会がサポートする、という流れだった。

【次ページ】 プロ化に乗り気ではなかったRFU。

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