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エディーも皮肉る協会とクラブの対立。
ラグビー大国イングランドの混沌。 

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竹鼻智

竹鼻智Satoshi Takehana

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posted2019/05/28 10:00

エディーも皮肉る協会とクラブの対立。ラグビー大国イングランドの混沌。<Number Web> photograph by Getty Images

ラグビーイングランド代表を率いるエディー・ジョーンズ。2003年以来のW杯優勝を目指す。

プロ化に乗り気ではなかったRFU。

 これに対してイングランドでは、RFUの幹部はそもそもプロ化自体に乗り気ではなく、アイルランド、ウェールズ、スコットランドで見られたような協会からクラブへのサポートはなかった。

 国内のクラブは「ラグビーのプロ化」を好機と見たビジネスマンの投資対象になったり、クラブ関係者たちの義援的なサポートをもとにプロクラブとしての転換を遂げていった。

 すなわち、クラブは協会に助けてもらった借りがなく、苦労して工面した資金で雇っている主力選手を代表にシーズンの一定期間連れて行かれ、それに対する金銭的保証を求める、という構図が生まれた。

 当時の一連のRFUの動きは、今日のクラブとの不協和音の原因だという声は多い。

 だが、イングランドに比べてはるかに競技人口も少なく、トップクラブの数も少ない先述の近隣とはラグビー事情も大きく異なり、同様の策が可能であったか、あるいは同じ策を採ったとしても現状の問題を避けることができたか、というのは誰にも分からない。

現在は協会とリーグから支払い。

 しかし、こうした内輪揉めを繰り返しながらも、国中のラグビーファンが応援するテストマッチは毎年行なわれ、4年に1度のワールドカップは、一大イベントとしてファンを興奮の渦に巻き込む。

 時期によって条件が変動するなどの相変わらずの抗争はあるが、代表選手を輩出したクラブにはRFUから報奨金が支払われる、という形で両者の関係は何とか正常を保っている。

 近年では、2016年にRFUとプレミアシップ・ラグビー・リミテッド(イングランドの1部リーグ、プレミアシップの運営会社)で、2020年までの4年間で合計1億1200万ポンド(約157億600万円)が、RFUから代表選手を輩出したクラブに支払われる、という契約が結ばれた。さらに、その後2024年までの4年間は同額プラス、RFUの収入額によってさらなる報奨金が支払われる。

【次ページ】 他国は代表の勝利が最優先。

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