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早稲田大の1年生・大塚達宣の選択。
Vリーグの誘いを断り、大学で伸びる。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuka Shibata
posted2019/05/27 08:00
黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会では決勝T進出に貢献した早大・大塚達宣(左)。新人賞を獲得した。
早大進学を選んだ理由。
高校卒業と同時にVリーグでプレーしないか、という誘いがあったのも事実だが、早稲田大を選んだ理由は2つあった。
「バレーボール選手として、早い段階からトップでプレーするのもとても大切で、ありがたいことだと思いました。でも、選手を終えてからのキャリアを考えた時に、将来は指導者になりたい、という気持ちも強かった。そのために教員免許を取りたい、というのがまず1つ、大学進学を決めた理由としてありました。
そこにプラスして、大学で4年間経験を重ねるなら、ただ教員免許を取るための勉強をするだけでなく、アスリートとして得られる知識も増やしたかった。トレーニングやスポーツ科学、コーチングの面でもトップレベルの場所で人として成長したい、自分を高めたい、と思って早稲田を選びました」
高校時代から頭脳明晰。それは試験や成績だけに留まらず、バレーボールでも同様で、練習試合をした相手から学べるものがあればすぐに取り入れ、実践する。バックアタックを入れた攻撃パターンが有効だと思えば、バックアタックを含めた攻撃展開を得意とするチームの戦い方を観察し、見様見真似でやってみると、意外とできるとわかり、実際の試合で新しいパターンをつくる。
試合に勝つこともそうだが、1つ1つそうやって積み重ねていく作業が何より楽しかった。
自信を掴んだ黒鷲旗でのプレー。
高校以上にキャリア豊富な選手が揃う早稲田大に入ってからも同様だ。
事前にアナリストや監督からデータを提示され、ある程度のパターンが決まってはいるが、試合になればもっと有効だと感じられる状況は多々ある。その都度臨機応変に対応すれば、より相手を混乱させ、自チームのチャンスが広がるのを実感している、と大塚は言う。
「(ミドルブロッカーの)武藤(鉄也)さんが前衛で自分がパイプへ入る時、基本的にはセッターの前から打つんです。でも、たとえばパスの返球位置がレフト側にずれたら、左利きの武藤さんはセッターに近い位置からCクイックに入って、レフトでは村本(涼平)さんが打つ準備をしていて、ライト側には宮浦(健人)さんがいる。
そうなると相手のブロックは少しレフト寄りになるし、宮浦さんに対しては1枚になるので、そこで自分もセオリー通りにセッターの前、レフトに近い位置からパイプを打つのではなく、咄嗟に『裏』とトスを呼んで、ミドルと宮浦さんのいる間から入ると、たいていフリーか、来ても1枚。状況を見ながら臨機応変に動けば、それだけ自分もチームも幅が広がる。黒鷲で、Vリーグ相手にもこのパターンは結構決まったので、自信になりました」