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大坂なおみ、同世代ライバルに連敗。
「一番学んだこと」は心の重要性。
posted2019/05/10 11:45
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
Getty Images
世界1位を逆転で破ったベリンダ・ベンチッチ(スイス)を祝福する大歓声に沸くコートで、手早く荷物をまとめた大坂なおみは、耳をふさぐかのように、スマートフォンにつながれたイヤホンをそっと耳に入れた。
左腹筋痛からの復調ぶりや、クレーコートへの適応力が注目されたマドリード・オープン。1回戦から3勝を積み上げ、4強入りまであと一歩に迫りながら、手が届かなかった。
ベンチッチ戦を前に、大坂は特別な思いを抱いていた。前回対戦した3月のBNPパリバ・オープン4回戦ではラリー戦で圧倒され、3-6、1-6でストレート負けしている。この大会は昨年、念願のツアー初優勝を遂げた思い出深い舞台。そこで連覇を阻まれた、苦く、新しい記憶が、雪辱の思いを強くしたのかもしれない。
「彼女に2回続けて負けたくなかった」
21歳は、素直に胸の内を明かす。
ベンチッチは大坂と同じ1997年生まれ。マルチナ・ヒンギスの母から指導を受け、ライジングショットを最大の武器としている。2016年2月、大坂よりも先に18歳で世界トップ10入り。けがでランキングを落としていたが、再び上位に戻ってきた。
いい方向に働かなかった闘志。
同世代のライバル候補に対する大坂の闘志は、いい方向に働かなかった。試合中にミスを引きずる原因になり、逆転を許した。
第1セット、大坂は第4ゲームで相手のミスにつけ込み、早々とブレークする。だが、その直後に第1サーブが入らず、ブレークバックされる。それでも、第8ゲームで2度のダブルフォールトを犯した相手に助けられ、ここをブレーク。盤石さは示せなかったものの、何とかセットを先取した。
第2セットはバックハンドのクロスが決まらなくなり、「ただ、ミスのことだけを考えてしまった」と反省する展開となる。第1ゲームではいら立ちを隠せず、ブレークポイントを3度逃した。まだ優位は変わらないはずなのに、大坂の攻めは消極的になる。第2ゲームでは甘い球を中途半端に返球し、逆襲を受けた。ブレークポイントを握られた場面では第2サーブを深く返され、たまらずミスした。
ブレークバックに成功した直後の第6ゲームでは、決めにいったフォアの強打をカウンターで抜かれ、客席が沸く。ここから連続でミスを重ね、最後はダブルフォールト。テニスの内容自体は悪くないのに、相手の好ショットやミスをした自分へのいら立ちをきっかけに、安定したプレーができないでいた。