テニスPRESSBACK NUMBER
ナダルが今季クレーで優勝ゼロ。
33歳にして正念場を乗り越えるか。
posted2019/05/16 17:00
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
Getty Images
日本選手以外ならどのテニス選手が好きかと問われたら、私ならまずラファエル・ナダルの名前が浮かぶ。スペイン、マヨルカ島出身の32歳。四大大会で17度(全豪1、全仏11、ウィンブルドン2、全米3)の優勝を誇る、ファンにはお馴染みの「赤土の王者」だ。
丸太のごとき二の腕から繰り出す左フォアハンドは強烈なスピンが掛かり、球がよく弾むクレーコートとは相性抜群。豪快なフォームで生み出す尋常でない回転量は、強靱なフィジカルを持つからこそ、らしい。
同じサウスポーの西岡良仁は、「子供の頃にナダル選手のような球を打ちたいと思ってマネしていたら、肘を痛めてやめた。肉体的に、あれは無理」と、自身のYouTubeチャンネルの中で話したことがある。
試合中のルーティンの多さでも知られ、ベンチ前にはペットボトルを2本、常にラベルの向きをコート側に向けて立てておく。先日、私が出張を終えてロンドンの自宅に戻ると、テニス観戦が好きな8歳の娘が自分の鼻を触り、髪を耳にかける動きを繰り返した後、サーブを打つ物まねを披露してくれた。「あと、お尻も触れば完璧だ」と改善点を教えると、喜んでいた。
小さな子供も引きつけられるほど、特徴が満載。テニス専門記者ではない私は、そういう「分かりやすさ」を持った強者に魅力を感じるのだと思う。
クレーで未勝利は2004年以来。
ナダルは今季、先日のマドリード・オープンまでのツアー6大会で1度も優勝できていない。全豪オープンの前哨戦、ブリスベン国際は左太もものけがで欠場。ぶっつけ本番で臨んだ全豪は決勝まで進んだものの、ノバク・ジョコビッチにストレートで完敗した。3月のBNPパリバ・オープンは4強まで進みながら、右膝のけがで棄権。その後のマイアミ・オープンも欠場した。
得意とするクレーコートのシーズンに入っても、以前の盤石さは戻っていない。モンテカルロ・マスターズでは準決勝でファビオ・フォニーニ(イタリア)に4-6、2-6で敗れ、4連覇を逃した。記者会見では「クレーでは過去14年で最悪の試合だった」と自虐的に話した。
続くバルセロナ・オープンでも準決勝でドミニク・ティーム(オーストリア)にストレート負け。マドリード・オープンも4強入りしたが、準決勝では、急成長中の20歳ステファノス・チチパス(ギリシャ)にフルセットの末に敗れた。シーズン開幕からツアーを戦い、この時期まで優勝がないのは、まだ10代だった2004年以来。タイトルに届かない世界ランキング2位を、「スランプ」と断じるメディアも出始めている。