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大坂なおみ、同世代ライバルに連敗。
「一番学んだこと」は心の重要性。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2019/05/10 11:45
赤土でのタイトル獲得とはならなかった大坂なおみ。同世代ベンチッチ相手の連敗は今後にどう影響するか。
大坂が勝つと思った2つの理由。
それでも私は、最終セットは大坂が取るだろうと考えていた。
その理由は2つある。1つはここまでの展開で、1度もラケットを投げていなかったから。怒りをラケットにぶつけようとしたことは何度かあったものの、その度にぐっとこらえ、自分を戒めるようにうなずいていた。不安定ながらもぎりぎりのところで心を制御できていると思えた。
2つ目は、2回戦後に話していた「ゾンビモード」のことだ。サラ・ソリベストルモ戦の第2セットも同じように崩れたが、最終セットは無心のプレーで平常心を取り戻し、「ゾンビモードに入った」と独特の表現で振り返っていた。だが、この日はゾンビになることはできなかった。
悪い兆しは、相手サービスの第1ゲームで早くも現れた。15-40から大坂はバックハンドのミスを続け、ブレークチャンスをものにできない。その直後、バックのクロスがサイドラインを割ると、ついにラケットを投げ捨てた。
それでも、何とか第5ゲームをブレークし、迎えたサービング・フォー・ザ・マッチの第10ゲーム。肝心な場面で第1サーブが入らず、ラブゲームでブレークされてしまう。
次のゲームでは、ミスの後で地面に強くたたきつけた後、ラケットを交換した。ゲーム間にベンチへ戻ると、タオルを頭からかぶって黙考する場面もあった。だが、乱れた心は元に戻ってくれない。5-6の第12ゲームはショットのフォームも崩れ、相手のマッチポイントではバックハンドがネットに掛かった。
世界1位を守りたい理由があった。
先手を取られた後も、集中を切らさなかったベンチッチは振り返る。
「私はただ、全ての球に集中していた。そうしたら、どういうわけか状況が変わっていた」
この言葉からも、主な敗因は大坂自身にあったと言わざるを得ない。
「今日はミスが出ると、そのポイントがどれだけ重要だったかとか、なんであんなミスをしたのかということばかり考えてしまった。普段なら、次のポイントに切り替えるのに」
ベンチッチに対する強烈な対抗心だけでなく、もう1つ、頭から離れないことがあった。
「ここでベスト4に入れば、(来週も)世界1位で居続けられると聞いていた。だから勝ちたかったし、試合中にそのことを考えていた。それは必ずしもいいことではなかった」
1位を守りたい理由があった。
「正直、フレンチではナンバーワンとしてプレーしたい。グランドスラムで第1シードになったことがないから」