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2019年ドラフトの上位12人・後編。
野手では東邦・石川昂弥が最有力?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/05/09 07:05
センバツで優勝した東邦の主将・石川昂弥もドラフト1位の有力候補だ。投手か野手か進路が注目される。
絶対経験則にあてはまる社会人左腕。
この春、着実に結果を積み上げているのが、JFE西日本・河野竜生(20歳・174cm81kg・左投左打)だ。
徳島・鳴門高でも甲子園で度胸の据わったピッチングを見せてくれていたが、“飛び級”で進んだ社会人球界でもそこは全く変わりなく、そこに速球の球威、スピードが加わって、極めてプロに近いレベルの社会人第一線でも、かなり手の焼ける左腕としてのしてきている。
ここ一番の場面では140キロ台後半にまで達する心身の昂ぶりと、それでも燃え過ぎないセルフコントロール能力。この2つのバランスがとれているから、ピンチに強い。
140キロ前後の球速帯の中で速球に強弱をつけながら、いつでもストライクがとれる変化球が2種から3種あれば、80%以上の確率で一軍ローテで投げられる。
これは、私が勝手に作った“絶対経験則”なのだが、その真偽のほどは、ヤクルト・石川雅規、広島・床田寛樹、ソフトバンク・大竹耕太郎、楽天・辛島航……何人もの左腕が立証してくれている。
24歳・宮川哲、信頼感は十分。
一軍で真っ向力勝負が出来そうな右腕が、社会人に2人。
東芝・宮川哲(24歳・177cm80kg・右投右打・上武大)と東海理化・立野和明(21歳・180cm78kg・右投右打・中部第一高)だ。
社会人1年目の昨年は抑えの切り札としてチームの役に立ってきた宮川哲が、今季は先発のマウンドで7イニング、8イニングと相手打線をねじ伏せられるところを見せて、この先のピッチングの世界を広げ始めている。
今年最初の公式戦「東京大会(スポニチ大会)」では、勝負強いセガサミーを相手に先発の7イニングを6安打1失点に抑え、12奪三振の無四球にまとめてみせたのを皮切りに、4月の京都大会でも快投を演じて、よい時期を長く継続させている。
肝心なのは、ここなのだ。
ある大会でボーン! とブレークしただけじゃ、プロは信用しない。少なくとも1シーズン、社会人2年目なら昨年の夏、都市対抗あたりから好調を持続してくれないと、実力とは認めにくい。
24歳で指名されれば、ルーキーイヤーには25歳になる。入った途端に「中堅」の年齢なのだから、ファームで2、3年鍛えてなんてノンキなことは言ってられない。
東芝・宮川哲の場合なら、コンスタントに145キロ前後をマークできる速球にプロでも使えるカットボールとフォーク。“速い系”は一級品だ。この先は、持ち味の速い系を一段と速く感じさせるための遅い系……たとえば、カーブをどこまで磨いてくるかに絞られる。