野球のぼせもんBACK NUMBER
今宮健太に泣かされた大竹耕太郎。
防御率0点台、5戦目での初勝利に。
posted2019/05/09 08:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
5度目の正直で今季初勝利を手にした。防御率0点台の快投がついに報われた。
5月2日の楽天戦、大竹耕太郎はヒーローインタビューで泣いた。
「今宮さんのせいですね(照笑)。あとは予想外の声援のデカさ。こんなにたくさんの人が僕のことを思ってくれていたのか、と」
先にお立ち台に上がった決勝打の今宮健太から「大竹が本当によく頑張ってくれました。大竹様々ですね。すごくいいテンポで毎試合、毎試合投げてもらってたのに、勝ちをつけてあげられなかったのは僕らの責任でしたから」との言葉を向けられると、もう鼻の奥がツンと熱くなっていた。
「僕だけ0勝だったので」
大竹は自分に嘘をつき続けていた。
抑えても、抑えても白星に結びつかない。だけど報道陣に囲まれれば「今年、僕は長い回を投げるのを目標にしていますから」と取り繕った。それは多分ベンチ裏でも同じだっただろう。野球はチームスポーツだ。個人事業主のプロ野球選手とはいえ、独りよがりな言動は強いチームになるほど嫌われる。ホークスはまさにその雰囲気がある。
「周りに見せないようにしていましたけど、焦りは正直ありました。気にしていないと言ったけど、気にならないはずがありませんよ。周りの先発投手はみんな勝っていて僕だけ0勝だったので」
4月3日 対オリックス 0-0 7回0/3無失点(勝ち負けつかず)
4月10日 対日本ハム 2-3 7回2失点(勝ち負けつかず)
4月17日 対ロッテ 0-1 8回1失点(黒星)
4月25日 対オリックス 3-0 8回1/3無失点(勝ち負けつかず)
試合が終わったロッカールームで、誰よりも大竹を気遣って声を掛けたのが今宮だった。「今日はゴメンな」。大竹だってチームメイトを恨む気などあるはずがない。だけど、ただただ苦しかった。