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2019年ドラフトの上位12人・前編。
最上位は佐々木・奥川ら高校生投手?
posted2019/05/09 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
4月が終わって「平成」が「令和」に変わり、ゴールデンウィークも終わった。
野球の世界も日本じゅうで高校、大学、社会人の大会、リーグ戦が展開されて、プロ野球のペナントレースと共に、今がシーズンたけなわである。
そのタイミングで、今年の「ドラフト戦線」最初の中間報告をさせていただきたいと思う。
5月あたまの現時点での「ドラフト1位12人」。今回はこの12選手を挙げていきたい。
「2019ドラフト」全体を俯瞰してみると、どうやら今年は「高校生投手」の年になりそうな雲行きだ。
昨年のドラフトは、日本体育大・松本航投手を指名した西武以外は、11球団が大阪桐蔭・藤原恭大、大阪桐蔭・根尾昂、報徳学園・小園海斗のいずれかを1位指名し、「高校生野手」のドラフトであったが、一転して今年は、大学も社会人もすべてのカテゴリーで「投高打低」の傾向が見えているようだ。
佐々木朗希はまだ「怪物」じゃない。
すでに、いろいろなメディアで“怪物”扱いされている大船渡高・佐々木朗希は、本当の意味でまだ怪物じゃない。
150キロ台をコンスタントにマークするスピードに加え、スライダー、チェンジアップ、フォーク……多彩な変化球でストライクがとれるようになって、何より誰に教わったのか、右ヒザを胸まで上げても、そこから先の体重移動でボディバランスを一切崩すことのない磐石の投球フォーム。
さらには、柔軟で手足の長い長身。今は体がまだ“薄い”が、前から見た時の体の面積、つまり「骨格」は大きい。上に筋肉を載せていけば、どんどん大きくなれる体型だ。
一方で、人もうらやむほどの才能を満載しながら、唯一彼が持っていないもの。それが、「全国での実績」であろう。
今は、彼に文字通り「日の出の勢い」があるから、「12球団佐々木朗希1位」というセンセーショナルな見出しも現れるが、現状ではそれはありえない。仮にこの先、彼が地元の大会や練習試合で“170”を超えてみせたとしても、大観衆の中の大勝負という場面で、同様のピッチングをやってのけてみないことには、プロは決して信用しない。
ドラフト1位の資格とは、胃袋が口から飛び出してきそうな緊張感の中でも、涼しい顔で持てる実力のあらかたを発揮してみせる「人としての力量」であろう。
佐々木朗希、最後の夏。
あいつのことは、もう丸裸にしてある…そうつぶやく岩手の強豪たちを片っ端から粉砕し、やって来た甲子園でもあの白皙のポーカーフェースであっさりと同様のピッチングをやってのけた時、彼は初めて「怪物」と称されるに値する存在になれると考える。