マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
サイン盗み経験者だからわかること。
利は少なく損は多い、やめなさい。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/03/30 07:30
サイン盗みは甲子園でもたびたび問題になったが、抜本的な対策はなされてこなかった。今回はどうか。
サインを盗むチームは「一流」に見えない。
しかし、サインが盗めない日は打てない。
次に何が来るのかわからない不安で、ものすごく心細い心持ちで投手と向き合っていたことを、昨日のことのように思い出す。
サインが盗めて次に何が来るかがわかる日は打てても、わからない日はからっきし。そんな「へぼっちい」打者しか作り出さないのが、「サイン盗み」という戦法なのだ。
最近はだいぶ減ったようだが、いつ頃までだろう……サイン盗みが当たり前のように、露骨に行われていた時代があった。
そういう試合、そういうチームを見ていると、
「ウチのチームには、サインを教えてあげないと打てないようなへぼっちいバッターしかいないんですよ」
選手の嘆きなのか、監督さんの嘆きなのか、そんな声が聞こえてくるように思えて、かっこ悪く感じ、見ていて悲しかった。
いくら甲子園に繰り返し駒を進めていても、いくら勝ち星を重ねていても、決して「一流」のチームには見えなかった。
得すると思ってしたことが、やってみたら意外と損も多かった。世の中には、そういうことが結構あるものだ。「サイン盗み」という戦法も、もしかしたらそうした“徒労”の1つなのかもしれない。
では、サイン盗みの代わりに何をやれば打てるようになるのか?
一流のバッターというのは、マウンド上の投手に対する集中がものすごい。これは訊いてみないとわからないが、彼らにとっては、せっかく集中している投手の向こう側でランナーにチョロチョロされては、むしろ“迷惑”なのではないか。
レジェンドの金言を紹介しよう。
「金言」をご紹介したい。
これは、自分の文章の中で何度か引用したエピソードである。
社会人球界に「西郷泰之」という大打者がいた。東京の無名の高校から社会人野球に進み、およそ20年間、社会人球界の第一線の強打者として君臨したアマチュア球界の「レジェンド」である。
その西郷さんとお話をさせていただく機会があって、前から訊いてみたかったことを訊いてみた。