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バルサからカンテラ育ちが消える?
“聖域”の中盤は今や移籍組が占拠。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/01/30 08:00
シャビ、イニエスタが去り、今度はブスケッツの後釜……。メッシが健在のバルサだが、有望な生え抜きの不在は懸念である。
バルサのサッカーが退屈に?
4日後のラ・リーガ21節、ジローナ戦。ベストメンバーで臨んだバルサだったが、昨年末から公式戦で9戦連続勝ち星のない相手に、立ち上がりから手を焼く。
前半のポゼッション率はバルサ55%、ジローナ45%とほぼ互角(20分過ぎまではジローナが上回っていた)で、パス本数も287本と247本で大差がなく、シュート数に至ってはジローナの7本に対してバルサは4本しか打てなかった。
ジローナが後半に退場者を出したため、最終的なデータは通常通りに落ち着き、メッシの公式戦7戦連続ゴールとなる鮮やかなループシュートもあって、バルサが順当に勝利(2-0)を収めたとはいえ、試合を通してテンポよくパスをつなぐシーンは数えるほどだった。確かにリーガでは首位をキープしているが、正直なところ、最近のバルサのフットボールは刺激が少なく退屈なのだ。
こうして、バルサがバルサらしさを失っていくなかで、オランダからやって来る若きプレーメーカーは、果たしてその持ち味を存分に発揮できるだろうか。
良くも悪くもメッシ次第。
「チーム状況が変化すれば、当然アプローチも微妙に違ってくる。でも、バルサのスタイルは不変だし、その原点が揺らぐことはない」
バルサを退団する前に、イニエスタはそう語っていたが、その言葉を素直に受け取っていいものか。
良くも悪くもメッシ次第のフットボールは、その依存度の高さゆえ、危機と背中合わせとも言える。すべての問題を解決してくれる「別の惑星からやって来た」スーパーな男も、今年6月で32歳。今のところ衰えの色は微塵もないが、それでも圧倒的な存在感は永遠ではない。
だからこそ、いつか訪れる“その時”に備えて、今一度、原点を見つめ直す必要があるのではないだろうか。ラ・マシアの存在意義を再確認し、ボールを、バルサのアイデンティティーを取り戻すのだ。デヨングの到来も、そのきっかけのひとつとすればいい。
クリスティアーノ・ロナウドが去った後のレアル・マドリーの混乱を、対岸の火事とのんびり見物を決め込んでいては、きっと痛い目に遭う。
今まさに炎のなかでもがいているのはマドリーだが、いつ火の粉がこちら側に飛んできてもおかしくはないのだ。