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バルサからカンテラ育ちが消える?
“聖域”の中盤は今や移籍組が占拠。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2019/01/30 08:00
シャビ、イニエスタが去り、今度はブスケッツの後釜……。メッシが健在のバルサだが、有望な生え抜きの不在は懸念である。
直線的で筋肉質なスタイル。
その一方で、シャビに続いてイニエスタも去り、バルサスタイルが変容を遂げつつある点も見逃せないだろう。
ラ・マシアから優秀なボールプレーヤーが育たないからそうなったのか、目指すスタイルが変化したからタレントが育たなくなったのかは、わからない。
それでも、前任のルイス・エンリケ監督の時代から、現在のエルネスト・バルベルデのチームに至る過程で、バルサのフットボールがより直線的で、より筋肉質になったことは間違いない。つなぎの意識が薄れ、かつてのように70%近いポゼッションで相手を圧倒するような試合は滅多に見られなくなった。
昨シーズンのパウリーニョ(現・広州恒大)、今シーズンのアルトゥーロ・ビダルと、技術よりもフィジカルを、横のつなぎよりも縦への推進力を強みとする人材が中盤に求められ、重宝されている事実からも、その変容は明らかだ。
ボアテンクを獲得したが。
さらにこの冬のマーケットでは、ルイス・スアレスの控えとして、イタリアのサッスオーロからケビン・プリンス・ボアテンクを半年間のレンタルで獲得している。
前線の複数ポジションをこなせる器用さも備えるとはいえ、彼もまた基本的にはパワーや高さを持ち味とするアタッカーだ。
1月23日のセビージャとのスペイン国王杯準々決勝第1レグで、いきなりスタメンに抜擢されたボアテンクだが、63分間のプレータイムで、結局1本もシュートを打てなかった。
たった1日しかチーム練習に参加していない状態でのぶっつけ本番だったのだから、当然エクスキューズはあるだろう。その割にはポストプレーやプレスバックなど、ベテランらしくそつなくこなしていたとの見方もあるかもしれない。
ただ、前で収まるだけに、単純に縦に付けるパスが増え、結果として中盤のパスワークにブレーキをかける要因にもなっていた。わずか1試合で判断するのは早計だが、伝統的なバルサスタイルに照らし合わせれば、親和性は決して高いとは言えないだろう。
リオネル・メッシとブスケッツを揃ってメンバー外にするなど、バルベルデ監督が大胆なターンオーバーに打って出た試合は、0-2の完敗に終わっている。