リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
裏切り者モラタ、マドリーに戻る。
因縁のアトレティコ加入に勝算は?
posted2019/01/31 08:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
1903年から始まるアトレティコの歴史を振り返ると、「宿敵であるR・マドリーのユニホームに袖を通してからやってきた選手」はたくさんいる。
有名どころでは、クラブ史上最も重要な1人である故ルイス・アラゴネスやバルサでも一時代を築いたシュスター、1995-96シーズンの2冠獲得に貢献したカミネロ、現ジェフユナイテッド千葉監督のエスナイデル、現R・マドリー監督のソラーリ……。ここ10年で見ると、フラードにレジェス、フアンフランにフィリペ・ルイスにアダン。サウールはR・マドリーのカンテラからやって来た。
つまり、極めて例外的なこと、ではない。
アトレティコのカンテラを退団。
ところが、アルバロ・モラタの加入に対しては不満の声があがっている。
1月26日に行われたリーガ第21節のヘタフェ戦では、アトレティコのBチームでFWを務めるボルハ・ガルセスを引き合いに出して、モラタを獲るぐらいならカンテラの若手にチャンスを与えよ、といったコールが湧き起こった。
その発信源はR・マドリーをとことん敵視する過激派サポーターだったようで、コールに反対する指笛も大きく鳴り響いていたものの、試合後の観客に取材した映像を見ると、一般的なサポーターのなかにもモラタ入団に顔をしかめる者がいるのは確かだ。
理由は無論、彼の過去にある。
モラタは、アトレティコのカンテラ出身の選手なのだ。
アトレティコ一筋の祖父を持つ彼は自宅の前にある古ぼけたゴール付きのグラウンドで早くからボールに慣れ親しみ、アトレティコのサッカースクールを経てカンテラの一員となった。勉学と並行してサッカーに熱を上げ、週末はトップチームの試合でボールボーイを務めるようにもなった。
ところが、14歳の夏にアトレティコをやめてヘタフェのカンテラに移籍する。
後年、「楽しくなくなったから」だと、本人が明らかにしている。