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バルサからカンテラ育ちが消える?
“聖域”の中盤は今や移籍組が占拠。
posted2019/01/30 08:00
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
「右SBなど石ころでも置いておけばいいものを!!」
旧知のスペイン人ジャーナリストがそう言って憤慨したのは、2017年の夏に、バルセロナが3000万ユーロ(約38億円)という大金を叩いて、ポルトガル代表のネウソン・セメドを獲得した頃だった。
セメドを個人攻撃したかったわけではないだろう。ただ、決して派手なポジションではない──彼に言わせれば石ころのようにどこにでも転がっている──右SBの人材でさえ、もはやバルサは自前で育てられなくなってしまったという事実を、皮肉を込めて嘆いたのだ。
ラ・マシア(バルサの育成組織の総称)から、トップチームへの人材供給が滞って久しい。今ではほとんどのポジションが外部からの血で染められているが、ついには“バルサイズムの聖域”とも言うべき中盤センターからも、ラ・マシア組が消え去ってしまう時代が訪れるのかもしれない。
デヨング獲得に地元紙は喝采。
現地時間の1月23日、バルサはアヤックス・アムステルダムに所属するオランダ代表MF、フレンキー・デヨングを獲得したと発表した。
将来を大いに嘱望される21歳の俊英の到来を、『ムンド・デポルティーボ』や『スポルト』といったバルサ寄りのメディアは、それこそ諸手を挙げて歓迎している。パリ・サンジェルマンやマンチェスター・シティとの激しい争奪戦を制したことも、喜びを倍増させている要因だろう。7月1日の入団が待ち切れないとばかりに、交渉の舞台裏から未来予測まで、デヨングにまつわる報道は熱を帯びる一方だ。
素晴らしいプレーヤーであることは間違いない。
味方にピンポイントで届けるロングフィード、アウトサイドにボールを乗せてくるりと方向転換するターン、背筋を伸ばして持ち上がり、局面を前に推し進めるドリブル……。高度なテクニックを平然と繰り出せるのは、視野の広さと卓越した戦術眼を備えているからでもあるだろう。