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与田剛の右手は下から2番目を選んだ。
根尾昂と竜の未来を握る、戦う男の手。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKyodo News

posted2018/12/26 11:30

与田剛の右手は下から2番目を選んだ。根尾昂と竜の未来を握る、戦う男の手。<Number Web> photograph by Kyodo News

根尾を1位指名した中日の与田新監督は、巨人など4球団と競合したが見事に1番クジで引き当て、1年目から遊撃手として勝負させる意向。

ドラフトは結局、ご縁の世界。

 落合氏は指名さえすれば獲得できた。山本氏も5位だから、指名は難しくはなかっただろう。1位の今中氏にしても、その年の阪神1位は球団職員として囲い込んでいた中込伸だったから、2位に繰り下げることはできたはずだ(実際、中日は同じく球団職員だった大豊泰昭を2位指名し、今中氏のために1位を空けた)。

 念のために記しておくが、田丸氏の野球人としての眼力は確かだ。プロ野球の選手経験はないが、法政二の監督として甲子園夏春連覇を達成。法大でも監督を務め、その指導力を買われてプロ(東京オリオンズ)の監督を任されたほど。スカウトとしても幅広い人脈を持っていたからこそ、落合氏や山本氏、今中氏の情報が入っていた。

 しかし、これらのレジェンドとは縁がなかった。ドラフトとは結局は「ご縁の世界」なのだ。

与田監督の一番くじで決めたこと。

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 2018年秋のドラフト会議では、3人の高校生野手が1位で競合した。楽天、阪神、ロッテの順に抽選した藤原恭大、オリックス、DeNA、ソフトバンク、広島の順に引いた小園海斗はいずれも残り福だった。「やはりそうなのか」と思う人も多いだろうが、確率的にはそんなことはない。

 主な競合選手で残り福だったのは野茂英雄(8球団)、大石達也(6球団)、松井秀喜(4球団)といったところ。小池秀郎(8球団)、清宮幸太郎(7球団)、大場翔太(6球団)は3番目、岡田彰布(6球団)は4番目、清原和博(6球団)は5番目だった。

 逆に最初に引いたのが当たりだったのは福留孝介(7球団、入団拒否)と菊池雄星(6球団)、今回の根尾昂だ。日本ハム、巨人、ヤクルトに先駆けて、交渉権確定をつかみ取ったのが与田剛監督だった。

「(中日の前に楽天、阪神、ロッテがいたので)まさか自分が最初に引くとは思っていませんでした」と予期せぬ一番くじだったが、競合は織り込み済み。与田監督は引くくじだけは決めていた。

「下から2番目を引く。それは自分の中で考えていたことなんです。すると、ドラフト会議が始まる少し前に妻からメールが来まして。なんと妻も『下から2番目』と書いてきたんですよ」

【次ページ】 「下から2番目」の後日談。

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