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出会いと別れのストーブリーグ。
球団広報が見た去り際の美学。

posted2018/12/23 11:30

 
出会いと別れのストーブリーグ。球団広報が見た去り際の美学。<Number Web> photograph by Kyodo News

引退する大嶋。ソフトボール出身という異色の経歴で、2012年ドラフト7位で入団。通算15試合に出場して18打数3安打、打点1。

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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Kyodo News

 野球界は今、オフである。12月も下旬に突入した。ストーブリーグと表現する時節が、佳境を迎えつつある。

 静かに2019年シーズンへの胎動が響き、公式戦の結果に一喜一憂することもないのがこの期間である。年が明ければ、10月のドラフト会議で指名して入団する選手が始動する。

 プロ野球のトピックが、巷を騒がせ始めて、あっという間に3月の開幕まで時は過ぎていく。

 一般社会ではなじみが薄い球団広報という仕事は、このストーブリーグに何をしているのか疑問を持つ方も少なくはないと思う。同じ球団職員の方々の中にも、いるだろう。広報で各自、それぞれの持ち場はあるが、シーズン中よりも先々を想定しづらい日々を過ごしている。

移籍、球界を去る選手と対峙。

 細心の注意を払って取り扱い、緊迫もする。最重要の案件が人事である。球団の人事で、広報がストーブリーグで関わるのはチームの選手が主になる。

 このオフには「台湾の大王」こと王柏融選手を筆頭にした新外国人選手の獲得、オリックス・バファローズから自由契約となっていた金子千尋(弌大)投手の獲得、スケール感ある交換トレードの成立などビッグな事例が、例年より多かった。

 新外国人選手、金子投手の例であれば報道リリースの作成、会見等の準備などが分かりやすい業務である。比較的、事務処理のような作業がメーンとなる。

 交換トレードのケースは、別である。そして来季の契約をしないと通告された選手の対応も、同様である。業務ではあるが、心が揺れるのである。

 広報は、トレード先へ移籍する選手、また球界を去っていく選手と対峙する。報道リリースの作成も同様だが、その過程で選手と向き合う必要がある。「去る人」を、取材対応へアテンドしたり、またコメントをもらったりするのである。彼らとは、最後の「仕事」となる。その瞬間は突然、訪れるのである。

【次ページ】 大嶋匠の目は真っ赤だった。

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