プロ野球亭日乗BACK NUMBER
カープが何としても生き残るため、
緒方監督に迫られる“決断”とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2018/11/02 17:30
柳田悠岐のサヨナラ本塁打を見つめる中崎翔太。まさに土壇場における、雌雄を決する一球となった。
守護神が守護神でなくなる時。
シーズンでずっと試合の最後を任せてきた守護神を外すことは、監督にとっては大きな決断である。
特に長丁場のペナントレースを勝ち抜くためには、絶対守護神の存在は不可欠だ。だからこそ監督もチームの選手たちも、そしてファンだって、そのクローザーに託す思いは1つなのである。
「あいつで負けたら仕方ない」
そういう守護神がいたからこそ、広島もソフトバンクもこの舞台にいるともいえる。
だが、彼らとてマウンドに立ったときに常に相手打者を封じ込めるわけではない。
この日の中崎のような失敗は必ずある。
ただ、日本シリーズという短期決戦では、そこで監督が見分けなければならないことがあるのだ。その失敗が果たして一過性のものなのか、それとも状態が落ちていて試合の最後を託すには厳しい状況なのか、ということだ。
守護神で、まさかのサヨナラ負け。
2012年の巨人と日本ハムの日本シリーズを思い出す。
この年の巨人は前年の守護神・久保裕也投手が故障で、西村健太朗投手に開幕から抑え役が託された。その後、一度は中継ぎに回ることもあったが、スコット・マシソン投手の故障で7月末に再びクローザーに戻った西村は、最終的には32セーブを挙げる大車輪の活躍を見せた。そうして原巨人にとっては3年ぶりとなるリーグ制覇の原動力となったのである。
そうして迎えた日本シリーズだった。
第4戦に同点の延長12回に登板した西村がサヨナラ負けを喫した。すると原辰徳監督は王手をかけた第6戦では、4対3の1点差で迎えた9回のマウンドに西村を指名することはなかった。
シリーズではセットアッパー役だった左腕・山口鉄也投手をクローザーとして起用して逃げ切り、3年ぶりの日本一奪回を遂げたのである。