プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本シリーズを制したホークスは、
完璧なる世代交代までやってのけた!
posted2018/11/04 12:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
真っ赤に染まったマツダスタジアムで、平成最後の日本シリーズを制したソフトバンクの工藤公康監督が舞った。
15回。
「本当に幸せです。シーズン終盤から満身創痍の中で突っ走ってくれた。選手のみんな! 本当にありがとう!!」
異例の回数を数えた胴上げに目を真っ赤に染めて、指揮官が声を震わせる。
予想を超える圧勝劇だった。
「2位で悔しい思いをして、みんなが日本一になるんだという強い思いがあって、ここまで来られた。勝ちたいという気持ちが、ベンチのみんなの声から伝わってきた。このチームの監督ができて幸せです」
敵地で1敗1分けのスタートだったが、本拠地に戻って3連勝で王手をかけ、最後は広島で一気に勝負をつけた。2年連続の日本一は、球団史上初のレギュラーシーズン2位からの“下克上”。ただ、その事実がかえってこのチームの底力を感じさせるものでもあった。
今季ホークスの象徴「甲斐拓也」。
今年のソフトバンクを象徴するのがMVPを受賞した甲斐拓也捕手だった。
育成選手から這い上がって、晴れ舞台で6連続盗塁刺殺という日本シリーズ記録を樹立。打率1割4分3厘で本塁打はもちろん0と打棒は全く振るわなかった。それでも“甲斐キャノン”でシリーズの流れを作り上げ、史上初めて守りだけで最優秀選手賞を受賞した。
すべてが完璧に揃っていたわけではない。
ただ得意分野でそれぞれが秀でた力を発揮した。補完しあって、弱さをカバーできる。逆にそういう補完力が、今季のソフトバンクの強さでもあったのだ。
このチームが本当に強い、と感じさせたのは、実は去年と今年の日本シリーズでみせた2つの“世代交代”だった。
1つはクローザーの交代劇である。