猛牛のささやきBACK NUMBER
佐藤世那、3年目21歳での戦力外。
トライアウトは上手投げで勝負。
posted2018/11/02 11:45
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
ORIX Buffaloes
今年もドラフト会議が行われ、夢のプロ入りをかなえた選手たちの、初々しく希望に満ちた笑顔と言葉が連日報道されている。
3年前、そこにいた佐藤世那は、「あっという間ですね」と苦笑した。
佐藤は3年前の夏の甲子園で、エースとして仙台育英高校を準優勝に導き、その年のドラフト6位でオリックスに指名された。しかしプロ3年目の今年、戦力外通告を言い渡された。
10月4日の朝、チームのマネージャーから、「今日はグラウンドに行かずに寮に残っておいて。話があるので」という連絡を受けた。そのときにある程度は悟った。ただ、「育成(契約)かな」と考えたという。
しかし、球団から告げられたのは戦力外通告のみだった。
「(戦力外になる)恐怖というのは、1年目も2年目も今年も、毎年ありました。でも本当の実感はわいていなかったというか……。まさか育成もなしだとは、正直思っていませんでした」
サイドスロー転向1年足らず。
まさか。そう思ったのは、まだ3年目だからということもあるが、何より、もともとのスリークオーター気味のオーバースローから、サイドスローに転向して1年足らずだったからだ。
昨年オフ、台湾で行われたウィンター・リーグに参加した際に、監督やコーチにサイド転向を打診された。
1年目はファームで12試合52イニングを投げて4勝4敗、防御率5.37。2年目は12試合45イニング、2勝1敗、防御率5.00。2年目の終盤に一軍に合流したが、登板機会はなかった。
佐藤自身、納得できる成績ではなかったが、まだ体ができあがっていない状態での2年間だった分、これからだという思いもあった。
一方で、「2年間何もできなかった」という焦りもあった。昨年は山岡泰輔、黒木優太、澤田圭佑、山本由伸といった新人投手が一軍で多く活躍。二軍にも有望な若手が増えて投手陣の競争が一気に激しくなっており、危機感もあった。