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大坂なおみが戦い切った準優勝。
4年前の錦織圭と同じ重圧に負けず。
posted2018/09/25 11:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
東レパンパシフィックオープン決勝の終盤、疲れて肩を落とす大坂なおみの姿に、全米オープン準優勝のあと、極度の疲労と戦いながら楽天ジャパンオープンを制した2014年の錦織圭が思い出された。
錦織も全米で当時世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチらを破り、決勝まで7試合を戦った。その後はメディア対応などに追われたが、2週間のインターバルでATP250のクアラルンプールに優勝、さらに翌週、ATP500の楽天オープンでも優勝した。
四大大会で活躍しても、ツアーはそこで終わりではない。このときの錦織にはシーズン最終戦に出場できる可能性もあった。だから気力で疲れを制し、全力でボールを追った。
大坂は、全米の決勝から1週間休んだだけで東レ・パンパシフィックに臨んだ。日本のファンが楽しみに待つ大会だ。「大きな意味のある大会。出場するからには、ぜひ優勝したい」と意気込んだ。錦織同様、ツアー最終戦WTAファイナルズへの出場権も視野に入れていたはずだ。
ラリーで主導権を握りきれず。
準決勝までの大坂は、これは優勝もあるな、というプレーを見せていた。パワーで押すだけでなく、冷静に状況を見極め、いまや彼女の代名詞ともなった「我慢」から一転、鮮やかなウィナーを決める場面が多かった。
決勝は第4シードのカロリナ・プリスコバとの顔合わせになった。シード順こそ第3シードの大坂の下だが、昨年7月に世界ランキング1位をマークした強豪だ。この大会でも接戦を3つ制して決勝にコマを進めており、どちらに転んでもおかしくない一戦と予想された。
立ち上がりの大坂は素晴らしかった。1ポイントも落とさずに2度のサービスゲームをキープした。ところが、2-2からのゲームでミスが増え、ブレークを許す。この大会でわずか2度目のブレークダウンだった。
ここから苦闘が始まった。大坂はなんとかブレークバックして追いつこうと焦る。しかし、プリスコバがそれを許さない。準決勝までと大きく違ったのは、大坂がラリーで主導権を握る場面が少なかったことだ。プリスコバのサービスゲームが素晴らしかった。
ファーストサーブの確率は81%、入った時は79%の高確率で得点につなげた。セカンドサーブ時のポイント獲得率も70%。どれも非の打ち所のない数字だ。サーブで優位に立たれ、大坂はブレークポイントを握ることさえできなかった。