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大坂なおみが戦い切った準優勝。
4年前の錦織圭と同じ重圧に負けず。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byAFLO

posted2018/09/25 11:00

大坂なおみが戦い切った準優勝。4年前の錦織圭と同じ重圧に負けず。<Number Web> photograph by AFLO

日本中からの期待を一気に集める形となった大坂なおみ。この日程とフィーバーの中での準優勝は、陣営にとっても得るものがあったはずだ。

「疲れを感じながらだったので」

 なんとか状況を打開しようと攻めたが、肝心なところでアンフォーストエラーが出た。試合後、ミスの要因について聞かれると「今それが言えるなら試合中に修正できていた」と苦笑したが、思い直して、こう続けた。

「疲れを感じながらの試合だったので、本当ならもっと深く体を曲げて打つべきなのに、それができていなかったかもしれない」

 やさしいボールでも、ひざをよく曲げ、体勢を作って丁寧に打つべきであり、大坂はそれができる選手だが、この試合では簡単なミスがいつになく多かった。決めなくては、追いつかなくては、という焦りが深層にあったはずだが、本人が挙げたように、思い通りに体を操れなかったことが直接の原因だろう。

 ここまで3試合すべてストレート勝ち。コートで過ごした時間は3時間41分で、相手の6時間59分をはるかに下回るが、全米で7試合を戦った疲労と、メディア対応、スポンサー対応に追われた数日間の疲れを見逃すことはできない。対戦相手のプリスコバも「彼女は疲れているように感じた」と微妙な異変を察知していた。

優勝した次の大会こそ大事に。

 濃密な2週間と嵐のような1週間を過ごしたあとに、100%の状態を求めるのは酷だったのか。試合後、大坂は「今までにないほど疲れを感じている」と明かした。

 四大大会で優勝した選手が、メディアやファンの注目を浴び、過剰な期待を背負わされるのは、もはや宿命だ。ただ、大坂は「次の大会が東京だったのは私にはいいことだった。全米で優勝しても、またしっかり戦おうという気持ちが持てた」と日本の大会に臨むことをプラスにとらえた。

 2017年全米で四大大会初優勝を果たしたスローン・スティーブンスは、次に出場した中国・武漢で1回戦敗退に終わり、翌'18年の全豪までシングルスで一度も勝てなかった。これは極端な例だが、達成感や安堵感で気持ちを切らす選手は少なくない。だから大坂とその陣営は、優勝した次の大会がどれだけ大事かよく分かっていたのだ。この点も、全米準優勝のあと、気持ちを切らさずにアジアシリーズに臨んだ錦織と同じだ。

【次ページ】 サーシャコーチも「誇り」。

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